2014年7月4日金曜日

【TORCH Vol.056】 私が唯一読む東野作品

山口貴久

このブログを書くことが決まった時、私が最近読んだ本を思い返してみました。すると、驚くことに、ここ数年は東野圭吾の小説以外に読んだ本といえば、アスレティックトレーニングやスポーツ医学に関する専門書しかないことに気が付きました。我ながら情けないことですが、そんな私でも専門書以外に唯一読んでいた東野圭吾作品について今回は触れたいと思います。

私が初めて東野圭吾という作家を知ったのは、当時所属していた社会人体操クラブの選手が東野作品を読んでいた時のことでした。

私「何、読んでるの?」
彼「東野圭吾です!」
私「誰それ?」
彼「え゛~知らないんですか~!?」

当時、数々の作品で既に有名になっていた東野圭吾を私が知らなかったのは、彼からするとかなりショッキングな出来事だったようです。とにかく、この時、初めて東野圭吾という名前を聞きました。

しかし、もともとミステリーや謎解き作品が好きではなかったからか、それからすぐに東野作品を読んだ、というわけではありません。実際に東野作品を読んだのは。数か月後の遠征の移動時でした。出発前の駅の書店で「十字屋敷のピエロ」という作品を購入しました。なぜこの作品を選んだのかは覚えていません。恐らく深い意味はなく、ただ、そこで売られていただけ……だからだと思います。

この「十字屋敷のピエロ」という作品は、とある一家に起こる事件の様子をピエロ人形の視点で語るといった、一風変わったものでした。物語がわき道に逸れることなく、非常にシンプルで読みやすかった印象があります。とはいえ、ものすごく面白かったかというと、それ程でもありませんでした。

しかし、その後も時間があるときは東野作品を読んでいました。それは“はまった”というよりも、他に読む本がなかったから、というのが正しい表現だと思います。

そんな中、東野作品に“はまる”きっかけとなったのは「手紙」という作品でした。この作品は犯罪加害者の家族をテーマに書かれたものです。兄は弟のために殺人を犯したが、弟は殺人犯の兄がいるという理由で様々な苦労を強いられる。とても悲しいですが、いろいろと考えさせられる作品でした。

そして私が「東野圭吾ってすごい!」と心から感じた作品は「天空の蜂」です。私がこの作品を手にしたのは2010年6月のことでした。大学の出張でベラルーシへ行く際に、せっかく移動時間がたっぷりあるので、長編大作をと思い購入しました。作品の内容は、盗まれた超大型ヘリコプターに爆薬を載せ、稼働中の原子力発電所に落とすと脅迫するテロリストを探し出す、というものです。内容に関しては意見が分かれるところですので、あえて触れませんが、何より私は、震災・福島原発問題より16年も前に、東野圭吾が原子力発電所をテーマに作品を書いていたことに驚き、感服しました。震災後に再読したことは言うまでもありません。ちなみにこの作品は来年映画化されるそうです。

東野圭吾といえば、ガリレオシリーズか加賀恭一郎シリーズを挙げる人が多いと思います。私は加賀恭一郎派で、実はガリレオシリーズはあまり好きではありません。理由は自分でも分かりませんが、加賀恭一郎というキャラクターが好きで、湯川学がそれほどでもないからだと思います。ただ両方ともドラマや映画などの実写版を見るのは好きです。それぞれの俳優さんが好きなので(このブログで書くことではないですかね・笑)

東野作品は、ひょっとしたら本格的なミステリー作品をお好みの方は、少し肩すかしを食らうかもしれませんが、非常に分かりやすく、入り込みやすいストーリの作品が多いのでミステリー導入編としては良いものだと思います。是非一度手に取ってみてください。