2015年2月14日土曜日

【TORCH Vol.064】 「You Gotta Have Wa」

マーティ・キーナート


「和をもって日本となす」
(角川文庫) 文庫 – 1992/2
ロバート ホワイティング (著),
玉木 正之 (翻訳)


You Gotta Have Wa  (英語)
Robert Whiting (原著), 


既に20年以上前、野茂投手が海を渡る前に出版された、このロバートホワィティングの名著を読んだことのない方に、是非一読して頂きたく推薦します。

「これば、“文化摩擦”に関する本である。すなわち、日本とアメリカのあいだに存在している亀裂を、ベースボールというスポーツを通して描いたものだ。われわれアメリカ人にとって、異なる文化を理解することがいかに難しいものか、とりわけ日本というまったく異質の文化がいかに理解し難いものであるか―ということを、知ってもらうために書いた本なのである」〜書評より

日本の野球は、work ball=仕事 で、アメリカのベースボールは play ball=楽しみ であるという著者の言葉どおり、数々の日米の野球とベースボールの違いを軸に、野球の話だけではなく、日米文化と国民性の違いをたくみに現しているこの本は、現代の日本の若者の必読書でもあるべきと考える。私が常々学生諸君に訴える持論、「自国を理解する為には、まずは外(外国)に出て経験する事」を、この本を読めば、一層理解してもらえるだろう。著書の唱える、「日本では『和』が大事で『出る杭はうたれる』」というような風潮は、実際かなり変化してはいる。
それでも、グローバル、グローバルと叫ばれる現代日本において、考えさせられる指摘は多い。
日米の歴史と文化論としてお薦めの1冊。


【TORCH Vol.063】 濫読のすすめ

丸山 富雄

 大学2年生の1年間、友人と競って、小説に夢中になった時期があった。友人が作者の誰がよいといえば、私はこの作者の小説は面白いと譲らなかった。もともと小説は好きであったが、その1年間はまさに熱に侵されたかのように貪り読んだ。
 よく読んだのは三島由紀夫である。角川か新潮かは忘れたが三島の赤いカバーの文庫本を読み、それを本棚に並べ悦に耽っていた。『潮騒』『金閣寺』『午後の曳航』『宴の後』『仮面の告白』などなど。しかし私が彼の小説に没頭していた昭和45年11月25日、彼が市谷の自衛隊駐屯地で自決したことは非常に大きなショックであった。
 石原新太郎の『青年の樹』も当時の私に夢や勇気を与えてくれた。確かヤクザの跡取りが東大に進みラグビー部で活躍する場面もあったと記憶している。勘違いでなければ、そこで行われていた合宿中の山中湖一週マラソンを、私も仙台大学に赴任しラグビー部を持つことになると、山中湖の合宿ですぐに実践した。その他、若い頃であったせいか、私の性格からか、石坂洋二郎などの青春ものも好きで、数多く読んだ。『青い山脈』『陽の当たる坂道』『光る海』など。
 また小説は旅情や郷愁を誘うものである。太宰治の私小説である『津軽』の足跡を追って20年ほど前、斜陽館から津軽半島を一周した。小説に出てくる蟹田や小泊などの寒村に暫し止まり、太宰も遠い昔ここに居たんだろうと思いに耽った。石坂洋二郎の『青い山脈』の舞台は弘前かもしれないが、試合等で秋田の角館に行くと、いつも私にはそこが『青い山脈』の舞台のように感じる。桧木内川の土手を自転車に乗る女学生を想像した。その他、島崎藤村の詩集『若菜集』や『落梅集』の小諸や千曲川には大学時代に何度も訪れた。軽井沢では堀辰雄の『風立ちぬ』を思い出す。行きたいと思いまだ行っていない所に、田宮虎彦の『足摺岬』、島崎藤村の『夜明け前』の舞台である馬篭などの木曽路、機会があれば是非行きたいと思っている。
 若い頃、学生時代に、是非、純文学にはまってみてはどうだろうか。きっと心の糧になると思います。