2015年10月8日木曜日

【TORCH Vol.073】「最近、手にする著書」

真野芳彦



 最近、手にする著書は風貌がスキンヘッドの著者である。
今月、購入した著書は、飯島 勲氏の「ひみつの教養」である。小泉政権時代から、ちょっと気になるおじさん(失礼お許しください。)だった。この著書は広告でベストセラーであることを知り、つい先日(H27.5月中旬)amzonで注文したら、その著書が2週間後に送られてきた。現在、つまみ読みの最中なので、この著書に関しては、今回は触れないことにする。いや、今後も触れる機会がないことを願う…。

ところで、スキンヘッドの著者というと、百田尚樹氏の著書を何冊か手にしている。そのうちの一冊に「海賊とよばれた男」があり、それは石油元売会社「出光興産」の創業者・出光佐三(いでみつ・さぞう)と、1953年(昭和28年)にイランから石油を輸入した「日章丸事件」をモデルとした小説である。

 明治18年(1885)に福岡県で生まれた19歳の国岡鐵造は、神戸高等商業学校(現・神戸大学)に進学。校長の水島銕也から商人としての生き方を学び、神戸高商の近くに住む資産家・日田重太郎から、どんな商人になるのかを尋ねられ「中間搾取のない商いをしたいと思っています」と答えた。就職してからも縁が続いていた日田から、「国岡はん、あんた、独立したいんやろう」と胸中を言い当てられ、日田が京都の別荘を売って作った大金・6000円を提供した。「お金を貸すとは言うてへんで。あげると言うたんや」という日田の条件は、「家族で仲良く暮らすこと」「自分の初志を貫くこと」「このことは誰にも言わんこと」の3つ。そんなミラクルと言えるような厚意によって、25歳の鐵造は九州の門司(もじ)で、国岡商店を旗揚げし、一家離散していた家族を呼び戻した。鐵造は当時日本に200台程度しかなかった石油発動自動車は今後増え、「いずれ日本の軍艦も石油で走る時代が来ますよ」と先見の目をもっていた。鐵造は、卸会社から機械油を卸してもらい、販売に取り掛かったが。ゼロから始めた商売に苦労するが、独自に調合した機械油を明治紡績に売ることに成功。販売を拡げるために、特約店の協約の隙間を突いて陸では他の商会の縄張りがあり自由にうれないので、海上で漁船を待ち構えて、やすく油を販売した。これが海賊といわれた由縁である。

 戦前から旗揚げした国岡商店は、当然のように戦中戦後を生き抜いてきた。その中のエピソードには、全従業員数は、約一千名いたが、多くの企業が人員整理をするなか、従業員の首をきらないことを宣言。佐三は戦前に集めた書画骨董を売り払い、銀行から可能な限り借金をして仕事がなく自宅待機されていた従業員にすら給料を払い続けた。また、出勤簿がなく、社内規定もなかった。それは、社員を家族同然のものと捉えていたからだと記されている。日本には創業100年以上の会社が諸外国と比較した場合、多く存在していると、飯島勲著の「ひみつの教養」には記されている。日本には国岡商店のような理念を持った会社ばかりではないが、創業100年以上続く企業からは理念一つのみでも学ぶ価値があるに違いない。

 そのような話題を挙げるとなると、我が社も国岡商店の理念を真似たらどうだ!という展開になりそうだが、それを言いたいわけではない。百田尚樹氏は風貌こそスキンヘッドで強面だが、感心する所が満載である。私は同氏の時代小説を他に3冊読んでいて、どれもがその時代に起きた事柄、専門的事象をしっかりと調べ上げている。研究に例えたら、先行研究をしっかりと調べ読み込んでいることが分かる著書である。一研究者としては見習うべき要素があり、それらの本を見る度に反省している。百田尚樹氏の言動等にはアレルギーを伴う方がいると思うが、私の反省が真っ先に理解できるので、一度は著者の本を手にすることをお勧めする。

【TORCH Vol.072】「脳に悪い7つの習慣」林 成之 著 (2009年 幻冬舎)

村上憲治

 かなり前の本でありかつて流行った「脳トレ」関連の本ではあるので、読まれた方も多いかと思うが、本書は私自身にとって重要な位置づけにある一冊であるためご紹介したい。
 著者は救急救命の最善で画期的な方法で命を救ってきた医師であり、脳科学者発刊の「脳関連本」とは一線を画した存在である。著者は現在の救急医療の現場において広く実用されている「脳低温療法」という試みを世界で初めて完成させた方で独自の視点で「脳科学」を捉えているところに興味が沸いた一冊であるが、私自身この本が世に発表される前に、スポーツ関係の講習会で著者の講演を聴き大変興味を持ち本書が発行されたとともに購入をした思い入れのある本である。本書内にも記載されているが、この「脳科学」はスポーツ場面でも有効に活用され、水泳の日本代表チームでも北京オリンピック直前に著者を招き講演をおこなっている。その事もあってそれ以降の日本水泳界の大きな躍進にも繋がっているのも事実である。
 本書では普段から何気なくおこなっている我々の習慣の数々のなかにはじつは脳に悪いものもあり、その習慣を止めるだけで脳の能力や効率がアップするというのが本書の内容である。著者は脳科学・脳医学の立場からその習慣がなぜ脳に悪いのかを解き明かしそのアドバイスを提示している。
なお、本書でいう習慣は“行動”ではなく主に“思考”である。

 では、「脳に悪い7つの習慣」とはなにか?
1 興味がなく物事を避ける。2“嫌だ”・“疲れた”と思う(言う)。 3 言われたことだけをコツコツやる。4 常に効率しか考えていない。5 我慢をする。6 スポーツや絵などの趣味がない。7 めったに人を褒めない。 
以上の7つである。少なからず誰でも必ずどれかに当てはまるものはあるだろう…

 本書の中で著者はその理由を科学的な発想で説明をしている。
脳は様々な感覚器(五感)から入力された情報に感情や気持ちのレッテルを貼る。そのレッテルが“嫌だ”というレッテルを貼るとマイナス情報となり脳の働きを止めてしまう。しかし“好き”・“楽しい”というプラス情報のレッテルが貼られると脳の働きが活性化する。そのことが物事を忘れにくくさせるため記憶の定着と同時に脳の自体のパフォーマンスが向上するといっている。これはよく言われる言葉で「好きこそものの上手なれ」は、まさにこのことを実証しているのだろう。
次に、「大体できた」「終わった」とゴールを意識してはいけないといっている。脳のなかには自己報酬神経群というものがある。この神経群は「ご褒美(報酬)が得られるかもしれない」という期待に対して活性化するため、いわゆる「鼻先のニンジン」状態を脳の中で勝手に作り出し結果的に“頑張りがきく”状態になってくる。そのためこの神経群はパフォーマンスが向上するために重要な要素になっている。「できた」「終わった」と“ご褒美”を要求しなくなった瞬間、もしくはそう思った途端にこの神経群の働きがとまり脳のパフォーマンスが低下して身体的なパフォーマンスも低下するといっている。そのため常に「まだまだ」「まだ先がある」と向上心を持って取り組むことで常に脳が活性化して脳自体のパフォーマンスが向上しそれが身体的パフォーマンスに影響することである。

 さらに具体的にどうしたらいいのだろうか?…どのような思考にすれば良いのだろうか?
著者はその打開策として、「きっとおもしろいにちがいない」と前向きな気持ちで取り組む。遊んで感動する。ゴールを意識せず、目標達成だけを考える。日記やブログで思考を整理する。物事を繰り返し考える。本は何度も読んで論理的に説明できるレベルまで理解を深める。他者に反論されても怒らない。物事を考えるときは“間”を置く。「だいたい覚えた」でやめないで確実に覚える。姿勢を良くし、字をしっかりと書く。よく話をする。リズムに乗ること。良いところを見つけて褒める。時には自分を捨て、人のために生きること。
など、脳にいい習慣(思考)を提案している。すべてはできないかもしれないがこのうちのいくつかは自身発想の転換でできる。

 本書は、一般の方々に向けメッセージを発信しているが、スポーツにおいて十分に活用できる内容であり、この本で書かれている「脳科学」の要因も最終的にはスポーツ心理学に繋がり、“勝つため”“逆境時”の発想に繋がるといえる。一度試してみてはいかがでしょうか