2025年9月1日月曜日

【TORCH Vol. 159】DIE WITH ZERO

                                                                             体育学部体育学科 講師 坂上 輝将

「残りの人生で本当にやりたいことを考えたことはありますか?」


今回は、学生の皆さんが若いうちにしかできないことに挑戦する勇気をくれる本を紹介したいと思います。紹介するのは、ビル・パーキンス著『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』です。タイトルには「死ぬときに財産を残すのではなく、すべてを使い切って死ね」というメッセージが込められています。少し過激に聞こえますが、決して浪費を推奨しているわけではありません。お金・時間・健康という3つの限られた資源をどう配分し、どう使い切って充実した人生を送るかを考えさせてくれる一冊です。


著者が一貫して伝えているのは、「お金は後から稼げても、若さや体力は取り戻せない」ということです。大学生の今は、好奇心旺盛で体力もあり、挑戦できる幅が一番広い時期です。将来のために貯金することも大切ですが、「この時期にしかできない経験」を逃さないことが人生においてとても重要です。


本の中で紹介されている著者自身の体験も印象的です。20代の頃、彼は仕事を一時的に減らしてまで長期のバックパッカー旅行に出かけました。多くの人が「もっとお金を貯めてから行こう」と考える中、彼は体力と好奇心がピークにある時期を選んだのです。その旅で見た景色や人との出会い、文化の違いは、時間が経つほどに価値を増していると彼は語ります。まさに「経験に投資する」という本書の核心を体現しています。


さらに本書が教えてくれるのは、「モノ(物質)は時間が経つと価値を失うが、経験は『思い出』として一生残る」ということです。洋服や車、家などのモノはやがて古びていきますが、経験から生まれた思い出は消えることなく、自分の中に積み重なっていきます。だからこそ著者は、お金や時間をモノではなく、経験にこそ投じるべきだと強調しています。


著者は、実践的な方法として「人生カレンダー」を描くことを推奨しています。自分の残りの時間を意識しながら、どの年代にどんな経験を積むのかを具体的に計画するのです。大学生であれば、4年間という限られた時間を区切って、「今しかできないこと」をリストに書き出し、実際に行動に移すことができます。留学、部活やサークルでの挑戦、長期旅行などの機会は、実は「今」が最適なタイミングかもしれません。


『DIE WITH ZERO』は、「今を生きろ」とただ漠然と説くのではなく、経験の価値を最大化し、人生の最後に「やり残したことはない」と言えるための具体的な考え方を示してくれる本です。読み終えたとき、「自分は何をいつやるのか」という問いが、これまで以上に明確に浮かんでくるはずです。そしてその答えは、きっと思っているよりも近い「今」の中にあるでしょう。


この本を手に取って、ぜひ自分の「やりたいこと」に一歩踏み出してみてください。その行動が、これからの大学生活をより充実させる大きな力になります。