2014年3月3日月曜日

【TORCH Vol.047】「本(媒体)を選ぶ」

講師 藤本晋也

 私は他の人と比べると、本を読む量が少ない方である。最近では、時間を作り読むように心掛けてはいるが、乗物移動中に活字を見ると酔う体質であることから、本や紙媒体をはじめ、PCやタブレット等、アナログやデジタルの媒体問わず、活字を見るともれなく酔うことになる。そのため、最近活字媒体の読み上げ機能等を導入し利用しようかと考えている。

 私にとって本は、小学生の頃、家での親の勧めや、学校の読書の時間等の設定により、半ば強制的に勧められ、仕方なくその時間を過ごすために読んでいた。しかし、親によると幼児期には、覚えていないが、絵本は好んでよく手に取っていたと聞いている。この違いには何があるのか考えると、活字情報を主とする“本”とビジュアル情報であるイラストを主とする“絵本”と捉えることができる。

 本として見た場合、同じものなのかもしれないが、本は、物事の概要をつかみ、深く理解するための情報を与えてくれる物。絵本は、イメージをつくりやすく、想像を膨らませてくれる物。この2つは、私にとって受け取る情報の質が異っていたと考えており、これらの違いが現在でも情報元として本を選択する大きな要因となっている。

 書籍よりもどちらかというと、専門誌、いわゆる雑誌をよく読む。特にモノ(物)系の雑誌で読むのが、雑誌の中ほど、もしくは最後の方に位置する、白黒のページである。最近の雑誌は全面カラーページが増え少なくなってきたが、この白黒のページには、興味を引くような情報が意外に多く掲載されていた。それは、その記事を担当する記者の体験記やコラムなどである。この内容には記者自身の感想はもちろんであるが、新しい製品等の活用用途や、通常使用ではありえないような内容を実験的に意図的に実践した結果等掲載していた。これらの情報は、あくまで、記事を担当した記者の主観的な立場で書かれていることが多いわけだが、意外にもユーザーが実施したくてもできないことをしているケースや、新しい方法を提案していたりすることが多かった。このような情報は、書籍である本には、まず掲載されない情報である。

 近年のICT技術の進歩により、当コラムに投稿されている先生方の中にも記述されているが、紙媒体をデジタルデータにし持ち歩き閲覧できるようにする“自炊”など、電子書籍による活字情報の閲覧のみならず、先に述べた読み上げ機能等、それらも含めた様々なビジュアル的表現が可能となってきている。最近では、電子雑誌等のページの画像部分が動画で閲覧できたり、3Dで立体的に見られたりと、紙媒体ではできなかったことができるようになってきている。

 このように、経験を基に記述してきたが、一般社会においても、情報の媒体とその活用方法がさらに多様化している現状を考えると、改めてこれまでの書籍、雑誌等の紙媒体としての情報の蓄積が圧倒的に多いということ。それらが膨大な量で記録・保管・管理されていることがわかる。そこから、情報の検索能力の向上が必要不可欠な能力としてこれまで言われてきたが、さらに、これら情報媒体が、活用されるシーンに応じて、日々進化し拡張しているということも考えると、検索能力の向上と同時に、自身にあった本の活用(媒体選択)能力も必要になってくるのではないだろうか。