2013年7月8日月曜日

【TORCH Vol.023】オリンピア


内野秀哲

 ブログスタイルとの事でしたので、とりあえずブログ向けの表現で、私が大学院生であった頃のお話を書きたいと思います。

 私には不似合いだった(!?) であろうとは思いますが、大学院生の頃から古代ギリシャとソクラテスにあらためて関心を持つようになりました。どうしても手に入れたかった4冊の新書を探して、何度と無く古本屋巡りもしました。この4冊は、「ソクラテス」、「ソフィスト」、「ロゴスとイデア」、「オリンピア」です。このうち1冊は中房敏朗先生から、そしてもう1冊は茅野良男先生から頂きました。またもう1冊は自分で見つけましたが、有難いことにこの3冊は新品で、再版を待たずにとても良い状態で手に入れることができました。

 ソクラテスの世界は私のような不勉強な素人には語れることなどもありませんし、また安易に美徳化できる話題でもありません。しかし、これらの本を読むたびに、私が思い悩みながら過ごしている現代と古代ギリシャとにある共通性が浮かび、ソクラテスに纏わる話には、なにか自分自身への問いがあるようにも思えます。

 東大の卒業式に「肥った~より痩せたソクラテスであれ」という式辞告辞があったと聞きました。この言葉の原文は"It better to be a human being dissatisfied than a pig satisfied; better to be Socrates dissatisfied than a fool satisfied."であり、当時の東大総長がこの部分の和訳を引用した、というのが正確なところであるようです。このことを知り、私も痩せても枯れてもソクラテスでありたいと思いはしましたが、それでもドラマチックな人生を好んで歩くことは、決して賢い選択ではありません。

 古代ギリシャとソクラテスに関心が向いたのは、大学院の講義で学んだ人間学・人間科学と、本学元学長の粂野豊先生が記された数多くの書類によって(業務上ではありましたが)、体育・スポーツの分野から学んだ人間(科)学と、それらが結びつきあって大きな関心になったのだろうと思います。

 さらに、体育系である学生の皆さんにとっては、この時代に古代オリンピックの背景があるということだけでも、古代ギリシャと哲学(美学)に関心を持つ意味があると思います。粂野先生は我々に「正直者が馬鹿を見るような世の中であってはいけない」とおっしゃいました。すべての競技のルールに、この哲学(美学)があると思いますが、一度そんな風に考えてみてはいかがでしょうか。


所蔵Information <図書館で探してみよう!>


  • 田中美知太郎 「ソクラテス」 岩波新書 131 Tm  図書館2階
  • 村川堅太郎 「オリンピア」 中公新書 780.69 Mk  図書館1階