2012年6月25日月曜日

「学ぶ力」を育てる学習環境について


図書館長 鈴木省三

人類は過去50万年にわたって、絶えず変化する環境に適応するために、身体能力を磨き、思考する脳を進化させてきた。ともすれば、わたしたちは狩猟採集生活をしていた祖先を、もっぱら体力に頼って生きてきた野蛮な人間と見なしがちだが、彼らにしても長く生き延びるには、厳しい環境の中、知恵をはたらかせて獲物を追い、巧みに捕らえ、蓄えなければならなかった。人類の脳の回路には、食や体の活動と学習とのつながりがもともと組み込まれている(John J.Ratey)。

スポーツの意義とは、人間の体を動かすという本源的な欲求にこたえるとともに、爽快感、達成感、他者との連帯感等の精神的充足や楽しさ、喜びを与え、また、健康の保持増進、体力の向上のみならず、とりわけ青少年にとっては、スポーツが人間形成に多大な影響を与えるなど、心身の両面にわたる健全な発達に資するものである(文部科学省)。

しかし、現在、子どもの体力低下、中高年のメタボリックシンドローム、高齢者の介護問題等を考えると、心身の活動と学習とのつながりが崩れているとともに、人間が体を動かしたいという本源的な欲求に応える保健体育の授業実践がなされてきたのかが疑問である。

近年、人間の遺伝子解析が進み、日本人は一般に不安を感じやすく、弱気で神経質だと言われている。これには「性格」遺伝子(セロトニン・トランスポータSS型)が関与しており、その型の存在する割合はアメリカ人では20%弱だが、日本人は70%近くになる。また、この遺伝子の割合が多い民族は、好き嫌いの感情を表す扁桃核が敏感に反応する。このことは、課題解決型の学習を学生に実施させると、欧米の学生は、積極的、論理的に答えを導き出そうとするものの、温和で消極的な日本人は、生徒の学習意欲を高める動機づけや学習方略が先生には必要となる。

日本の歴史を振り返ってみると、寺子屋によって高水準の教育が庶民の間で広範に定着しており、明治初期における日本の識字率は世界最高クラスにあった。明治期の日本が急速に近代化を達成しえた背景として、寺子屋が高い教育基盤を社会に与えていたことを評価する見解もあり、そのKey wordsは次の6項目になるであろう。①少人数 ②驚きを与える(感動)  ③丁重と厳格 ④チームワーク ⑤仲間 ⑥コミュニケーション。

このような社会的背景の中、スポーツ界においてもスポーツ振興基本計画における「国際競技力向上のための総合的方策」のひとつとして日本オリンピック委員会(JOC)がナショナルコーチアカデミーを創設した。 この制度は、Top of the Topのコーチの資質向上のための「学ぶ力」を熟成する教育の場として期待される。「アカデミーでは、役立つことを教えるが、答えは教えない。答えの出し方を学ぶ場である。」と位置づけている。

このように、「学ぶ力」を日本人に合った環境での学習方略を模索する試みが多方面でなされている。

これらのことから、仙台大学図書館は、学生の学習や大学が行う高等教育及ぶ学術研究活動全般を支える学術情報基盤の役割とともに、仙台大学生に合った「学ぶ力」を熟成する学習環境をさらに構築したいと考えている。

この件に関して、図書館を利用する皆さんのアイディアや要望をお待ちしています。