2020年10月5日月曜日

【TORCH Vol.123】 本を読むとは

教授 櫻井雅浩 


本を読むとは、ある人々の過去即ち歴史を知ることです。自分が経験できない他人の経験を学ぶと言っていいでしょう。山本夏彦(1915~2002)は「本を読むことは、既に死んだ人と話をすること。」と書き残しています。読書の醍醐味と言っていいでしょう。

今回紹介する本は、鈴木貫太郎著(昔の総理大臣と同姓同名ですね)「中学の知識でオイラーの公式がわかる」です。e iπ+1=0 見たことありますか?理系数学でもほんの少し触れるだけで、詳しい説明は聞いたことがありません。ただあまりにも有名な式なのでずっと気になっていました。eはネイピア数、iは√-1虚数単位、πは円周率ですね。これを中学の知識出来る?と思うでしょう。著者の経歴が変わっています。「中学の知識でオイラーの公式がわかる」によると1966年2月生まれ。県立浦和高校に進学。勉強は高校受験で燃え尽きて高校時代は完全落ちこぼれ。数学は0点連発、成績は学年ビリ(456位/456人)。2浪して早稲田大学入学(社会科学部)。在学中に始めた塾講師(算数・数学)のアルバイトから正社員になり大学は中退。講師時代は過去問を徹底研究。次男が生まれたのを機に専業主夫。2017年からYouTube投稿を始める。所謂コテコテの文系だったのにアルバイトのために数学を勉強してそれを予備校で教える。人の運命は分からない、を地で行く感じです。そしてこの鈴木貫太郎先生のYouTubeが面白い。最初の定義から正しく「中学の知識」で解説してくれます。受験理系数学から離れて約40年、遠い彼方にあったオイラーの公式が理解できるようになりました。有名人のYouTubeチャンネルは沢山ありますが大体は書籍を動画で解説したもので、動画が書籍化された稀な例でしょう。新しい情報発信の一例となると思います。