准教授 高崎義輝
皆さんは、「ブッタとシッタカブッタ」(メディアファクトリー)という本をご存じですか。仏教の教えを説く本ではありません。「人の悩みをどう解決したらいいか」をテーマにした漫画シリーズで、200万部突破のロングセラーです。お釈迦様に似た豚のブッタというキャラクターと人生あれこれ考えるシッタカブッタというキャラクターが登場し、「あれこれ考えているうちに心が楽になっていく」というような本です。
4コマ漫画ですので、楽に、時間がないときでも楽しめます。現在のところ、8巻発行されているのですが、私はそのすべてを購入しました。一言で言うと、私が“はまった”漫画本です。漫画本と馬鹿にしてはいけません。ここでは、その“はまった”理由を紹介したいと思います。
私がこの本と出会ったのは、1995年精神科の病院に勤務していた時です。ある精神科医がうつ病の患者さんに、「ブッタとシッタカブッタ」を読むことをすすめていたところに、同席していたことがきっかけでした。驚くべきことに、数日後「ブッタとシッタカブッタ」を読んだ患者さんが、他者との人間関係が以前と比べ、穏やかに、前向きな行動ができるようになったのです。
今思えば、漫画本による認知行動療法であったのだ(キャラクターの行動とその結果を自分の行動に重ね合わせ、自分に足りないことを自覚し、行動の変容をはかること)と理解しています。
こうした経験から、心が疲れている学生が相談に来ると、研究室にあるこの「ブッタとシッタカブッタ」の本を貸し出しするというのが、定番の対応になりました。この本は、「そのまんまでいいよ」と心が疲れている学生にやさしく語りかけてくれます。学生の評判も良好です。心が楽になることを私自身も体験したおすすめの一冊です。
また最近では、この「ブッタとシッタカブッタ」をコミュニケーションの学習教材としても活用しています。「ブッタとシッタカブッタ」には、多くの恋愛シーンがあり、恋愛を成功させるためには、コミュニケーション能力が必要であることが理解できます。コミュニケーションを学問として理解しても、できる技術・使える技術になるとは限りません。
恋愛(それも漫画)という学生が最も興味を持ちやすいテーマを題材に、コミュニケーションをできる技術とするための一つの教材として「ブッタとシッタカブッタ」は活用できると感じています。
最後に、この本を執筆された小泉 吉宏(こいずみ よしひろ)を調べていましたら、「一秒の言葉」に辿り着きました。SEIKOのCMで有名になった詩で、小泉さんはその作者でした。
今頃気づいたのですが、大学2年生(1985年)頃よく見たCMで、今でも記憶している詩でした。子供の道徳の教材として使われていたことを思い出しました。感動的で、力が湧いてくる詩です。
そうして考えると、随分昔から小泉さんにはお世話になっていました。
心が疲れてきましたら、是非、皆さんも「ブッタとシッタカブッタ」のお世話になってみてはいかがでしょうか?
<一秒の言葉>
「はじめまして」 この一秒ほどの短い言葉に 一生のときめきを感じることがある
「ありがとう」 この一秒ほどの言葉に 人のやさしさを知ることがある
「がんばって」 この一秒ほどの言葉で 勇気がよみがえってくることがある
「おめでとう」 この一秒ほどの言葉で 幸せにあふれることがある
「ごめんなさい」 この一秒ほどの短い言葉に 人の弱さをみることがある
「さようなら」 この一秒ほどの短い言葉が 一生の別れになるときがある
一秒に喜び、一秒に泣く。一生懸命、一秒。