教授 小松正子
1:内田樹
ウチダ先生というのは、『日本辺境論』(新書大賞)でも著名な思想家・武道家、内田樹(たつる)のことだ。先日、NHKEテレ(達人達(たち))で武田鉄矢が内田樹について、次のように端的に表現していた。「もう、『この人は、ただ者じゃないぞ』って思いました。近頃、私がテレビやラジオでしゃべっていることのほとんどは内田師範のモノマネですね。」
さて、表題の質問は、内田樹著「邪悪なものの鎮(しず)め方」(バジリコ)の本の帯に書いてあったものだ。本の紹介には、「“邪悪なもの”と遭遇したとき、人間はどうふるまうべきか?『どうしていいかわからないけれど、何かしないとたいへんなことになる』極限的な状況で、適切に対処できる知見とはどのようなものか?この喫緊の課題に、ウチダ先生がきっぱりお答えします」とある。きっと、表題に釣られて(?)このコラムを読んでいるあなたは、邪悪なものに出会って途方にくれた経験のある(あるいは現在困っている)人だ。
内田は、「“邪悪なもの”を構成する条件の一つは、私たちの常識的な理非の判断や、生活者としての倫理が無効になるということ。『どうしていいかわからない』ということです。渡り合うか、折り合うか、戦うか、スルーするか・・・・」として、「私自身のみつけた答えは、“礼儀正しさ”(ディセンシ―)と、“身体感度の高さ”と、“オープンマインド”ということでした。」と述べている。私は、“身体感度の高さ”は、“五感を研(と)ぎ澄まして”と言い換えて、以来、何か困ったことがあると、この3つを思い出している。
ちなみに内田は、ついこのあいだまで大学教授(フランス文学)だったが、今は、自宅兼道場で、執筆活動と師範業に専念しているようだ。蛇足になるが、内田は、何か世の中で問題が起きて解釈に困ったときに、私が(教員ではなく)個人として、意見を聞きたい人の一人だ(例えば、今、話題の特定秘密保護法案についてなど)。
ところで、邪悪とは限らないのだが、宇宙人に関して次に触れておく。
2:UFOによる領空侵犯・挑発に対し迎撃すべきか、米大統領は自ら電話でアインシュタインに助言を求めた。
これは、UFO史上“ワシントン事件”と呼ばれるもので、1952年7月に起こった(以下、「未確認飛行物体UFO大全.並木伸一郎著 Gakken」よりかいつまんで紹介する)。ワシントン上空に突如怪光体群が現れて、ホワイトハウス上空領域まで平気で侵入を繰り返した。それらは空軍の計算によると、時速200キロ前後のヘリコプターなみで動いているかと思えば、突如スピードを増し、時速1万1700キロという途方もないスピードで飛び去ったり、急に方向転換したりした。そこで、時のトルーマン大統領が、アインシュタインに電話をかけ助言を求めた。アインシュタインの答えは穏健なものだった。「未知の知性体の科学技術力が不明である以上、むやみに発砲したり戦闘することは、絶対に避けるべきだ」
上記の真偽は、私は保証はできない。しかし、宇宙の歴史が約138億年で、地球の歴史は約46億年。とすると、ちょっと先輩の星があり、人間よりはるかに進化した知的生命体がいても不思議ではない。中田力(つとむ)氏(新潟大学脳研究所統合脳機能研究センター長)は「脳のなかの水分子―意識が創られるとき(紀伊国屋書店)」のなかで、「生体を作り上げている物質は有機化合物・・・その基本構造を作り上げるのが炭素(原子番号6)である。・・・炭素は、きれいな、バランスのとれた立方体を作り出すことができるのである。・・・ところで自然界の元素のなかで、完全な正四面体の軌道をつくれる元素は炭素だけではない。原子番号14のシリコン(珪素)である。地球での生命を作り上げる主役は炭素に譲ったシリコンだが、・・・宇宙のどこかにシリコンを基本とする生命体が、本当に、いるかもしれない」と述べている。
「チーズはどこへ消えた?(スペンサー・ジョンソン著.扶桑社)」という、ネズミが大切にしていたチーズの話の小本は知っている人もいると思うが、私も、チーズが消えてから(何か事が起こってから)あわてたくないので、いろいろな可能性を考えておきたい。フランスなどには、UFO情報を検証する国家機関もある。ちなみに内田樹も“邪悪なものの鎮め方”のなかで、「実験と仮説に対する開放的な構えのことを“科学的”というのだと私は信じている」と書いている。
特に学生は、将来宇宙人と遭遇する可能性が、若い分だけ高い(!?)。万が一のそんなとき、“邪悪なものの鎮め方”も思い出して、うまく立ち振る舞ってもらえたら幸甚だ。
(平成25年11月26日)