2013年12月5日木曜日

【TORCH Vol.039】「ベトナムの ダーちゃん」早乙女勝元 文 ・ 遠藤てるよ 画

准教授 関矢貴秋

 私とベトナムとの出会いは、小学校4年生の時でした。題目に記した「ベトナムのダーちゃん」を通してです。小学校の課題図書として購入した記憶があります。この本には13歳の少女による、当時ベトナムで起こっていた戦争につての実体験を基にした告白が綴られてあります。当時の私にとっては少し、いやかなり難しい内容と文章であり、その行間からは想像もつかないこと、言葉に出来ないくらい大変なことが起こっていることが感じとれました。今でも涙が出たことを覚えています。ですから私には数十年後の昨年まで、その表紙を開いた記録はありませんでした。

 しかし、そんな私が再びこの本を実家の書庫から引っ張り出し、じっくりともう一度読んでみようと思ったのです。それは昨年ベトナムにてJICA(国際協力機構)との共同事業を担うこととなったからです。過去にあった戦争の影響によって身体に障害があり、不自由な生活を余儀なくされている大人や子どもたちに、もう一度社会復帰を目指してリハビリに取り組んでもらう試みです。BOPを対象とした事業の一つで、身体障害者の社会復帰を医学・福祉・教育などの側面から支援するプロジェクトであります。私はベトナムを訪れる前に、再びこの本を読み返すことで、自分が活動を共にする人たちの歴史を少しでも知ることが出来るのではないかと思い静かに表紙を開きました。

 ベトナムとの繋がりはその後、新たな展開を迎えました。去る11月18日、仙台大学にベトナム社会主義共和国・ホーチミン体育大学の2名の先生が来校されました。我が大学と国際交流を進めるための協定締結・調印にこられたのであります。ホーチミン体育大学は体育科学を専門とすることから、本学との間で共通の学問を通して交流の伸展が期待されます。

 また、仙台大学はもう一つ、ベトナムの大学と協定を交わしています。首都ハノイにあるハノイ大学です。ハノイ大学は外国語大学として発展してきた歴史がありますが、今後は健康科学関連の学部開設の検討もされているとのことです。健康を科学的に研究し健康増進の方法を普及させることは、これからのベトナムにおいては必須の要件であると思います。その点においても、我が大学との連携は未知なる可能性を秘めていると思います。

 少し余談ですが、そんな未知なる可能性を秘めたベトナムについて記します。ベトナムは東南アジアのインドシナ半島東部に位置します。中国・ラオス・カンボジアと隣接し、東は南シナ海に面しています。首都はハノイです。ベトナムは南北に1650㎞と長い国土であり、南にあるホーチミン市は北にある首都ハノイから約1100㎞離れています。では日本からはどのくらいでしょうか。直線距離で約3600㎞、成田国際空港からホーチミン市まで約6時間、ハノイまでは成田から約5時間半です。国土全体としては高温多雨で、熱帯モンスーン気候に属しています。しかし南北に細長い国土のため北の首都ハノイの季節には四季があります。まるでベトナムの観光案内でも始めるかのような件になりましたので本題に戻ります。

 このように仙台大学と東南アジアの南国ベトナムの二つの大学が協定書を結び、これからの21世紀を見据え、体育・健康科学を基本として交流を進めようとしています。もちろん学生の皆さんもその一員として活躍が期待されているのです。ですから少しでもベトナムに興味関心を持った方はその南の国に目を向けてほしいと思います。
 安全で平和といわれている日本から、世界各国に連携の環を広げている仙台大学です。ただ協定を結ぶだけではなく、是非皆さんも世界に向けて自らの知識・技術を発信すると同時に、その国の歴史・風土・社会情勢、etcを多くの関連図書から学び実りのある国際交流にして頂きたいと思います。

追伸 「ベトナムのダーちゃん」には続編として「ダーちゃんは、いま」があります。いずれも仙台市立図書館にて閲覧できます。