2026年8月20日木曜日

【TORCH Vol.169】問題を「解く」のではなく、問題そのものを問い直す ― 佐藤允一『問題構造学入門―知恵の方法を考える』を読む ―

  


体育学科 教授 宮西 智久


大学で学ぶということは、知識を覚えることだけではない。むしろ重要なのは、「何が問題なのか」を自分自身で考え、その問題をどのように捉え、どのような方法によって解決していくのかを考えることである。その意味で、学生に薦めたい一冊が、佐藤允一氏の『問題構造学入門知恵の方法を考える』(ダイヤモンド社,1984)である。

本書は、問題解決のための方法を論じた本である。しかし、単に「問題が起きたら、この方法で解決すればよい」という実用書ではない。本書の重要な点は、問題を解決する前に、「そもそも何を問題としているのか」を明確にする必要があると指摘していることである。

私たちは、何かうまくいかないことが起こると、それをすぐに「問題」と考える。例えば、「試験の成績が悪い」「授業に学生が来ない」「大学の志願者が減っている」「スポーツの競技成績が伸びない」といった現象である。しかし、これらは本当に問題そのものなのだろうか。

本書では、「問題」を目標と現状のギャップであり、解決すべき事柄として捉えている。ここから考えると、「成績が悪い」という現象も、どのような成績を目標としているのかによって、問題になる場合とならない場合がある。同じように、「志願者が減少している」という現象についても、大学が何を目標としているのかによって、その意味は異なる。

つまり、問題は単に目の前に「存在する」のではない。私たちが「こうありたい」という目標、つまり「あるべき姿(理想)」を設定し、現状との違いを認識することによって、初めて問題として捉えられるのである。

ここで、本書が示す「問題」と「問題点」の区別は重要である。目標と現状との間に生じるギャップが「問題」であるのに対し、その問題を構成する要素が「問題点」である。さらに、問題構造学の考え方を踏まえれば、問題点のうち、解決することが可能であり、かつ解決すべきものを「課題」として捉えることができる。したがって、問題を認識しただけでは、まだ具体的な解決には至らない。問題の構造を明らかにし、その中から「何を解決すべきなのか」を課題として特定することが、問題解決に向けた重要な段階となる。

さらに本書が示す重要な視点が、「問題を構造として捉える」という考え方である。社会やスポーツ、教育における問題は、通常、一つの原因から生じているわけではない。複数の要因が相互に関係し、その結果として一つの問題が形成されている。そのため、「原因はこれだ」と単純に決めつけるのではなく、問題を構成する要素と、それらの関係を明らかにする必要がある。そして、その構造の中から、解決可能で、かつ解決すべきものを課題として見いだしていくことになる。

この考え方は、現在の複雑化した社会を考えるうえでも有効である。少子高齢化、人口減少、地域社会の衰退、教育改革、スポーツ人口の減少、部活動の地域移行など、現代の社会問題は、単純な正解に還元することが難しい。こうした問題に対して必要なのは、すぐに解決策を提示することではなく、まず「問題の構造」を理解し、その構造の中から、何を解決すべき課題として設定するのかを明らかにすることである。

もちろん、本書の考え方をそのまま現代の社会問題に適用できるわけではない。「目標と現状とのギャップ」という枠組みだけでは、そもそも誰が目標を決めるのか、異なる価値観を持つ人々の間で目標をどのように共有するのか、といった問題までは十分に説明できない。しかし、だからこそ本書を批判的に読む意味がある。本書の方法をそのまま受け入れるのではなく、その考え方を手がかりとして、自分自身の問題認識を問い直すことが重要なのである。

この視点は、大学生にとって特に重要である。大学では、与えられた問題に正解するだけでは十分ではない。卒業論文や研究活動では、「何を研究するのか」「なぜそれを研究する必要があるのか」「何を明らかにしたいのか」を自分で設定しなければならない。これは、問題を認識し、その構造を捉えたうえで、研究によって解明すべき課題を設定するという作業である。

例えば、「野球選手の打撃動作を研究する」というテーマだけでは、研究上の問題は明確ではない。どのような打撃動作を問題とするのか、何を「望ましい状態」とするのか、現在どのような状態にあるのか、その差は何によって生じているのかを考える必要がある。そのうえで、問題を構成する複数の要素の中から、研究によって明らかにすることが可能であり、かつ明らかにする必要のあるものを研究上の課題として設定する。ここまで考えて初めて、単なる「研究テーマ」が具体的な研究課題へと転換されるのである。

さらに、生成AIが急速に普及している現在、この本を読む意味は一層大きくなっている。AIに質問すれば、短時間で多くの情報や解決策を得ることができる。しかし、AIがどれほど優れた答えを提示しても、最初の問いが適切でなければ、得られる答えもまた適切ではない。

これからの時代に求められる能力は、「答えを知っていること」だけではない。「何を問うべきなのか」を自分で考える能力である。問題を設定し、その構造を捉え、そこから解決可能で、かつ解決すべき課題を見いだし、必要な情報を集め、複数の選択肢を比較したうえで、自分自身の判断を形成する。この一連の思考こそ、大学で身につけるべき重要な能力の一つである。

本書を読む際には、「佐藤の方法を覚える」ことを目的にするのではなく、「自分はいま、何を問題だと思っているのか」と問い直してほしい。そして、その問題は本当に問題なのか、どのような目標とのギャップとして捉えられるのか、その問題を構成している要素は何か、その中から何を課題として設定すべきなのか、と考えてみてほしい。

大学での学びにおいて重要なのは、正しい答えを早く出すことだけではない。答えを出す前に、問題を明確にし、その問題の中から解決すべき課題を見いだし、問いそのものを吟味することである。

その意味で、『問題構造学入門』は、問題解決の本である以上に、「考えるとはどういうことか」を学ぶための本である。卒業論文や研究活動に取り組む学生だけでなく、将来、社会の中で自ら問題を発見し、その構造を捉え、解決すべき課題を設定しようとする学生に、一度は読んでほしい一冊である。

なお、本書をより平易に学びたい初心者向けの著書として、同氏の『図解 問題解決入門問題のとらえ方と打つ手の見つけ方』(ダイヤモンド社,1987)もあるので、こちらにも目を通してほしい。


【参考資料】

AKIコンサルティング(2025)「問題構造学~全てのビジネスパーソンに持って欲しいフレームワーク~」. AKIコンサルティング「問題構造学」,(参照日2026819.

2026年2月5日木曜日

【TORCH Vol. 168】「風林火山」は武田信玄の200年前、宮城の地で掲げられていた

 

                    子ども運動教育学科 教授 小野 敬弘


■「破軍の星」 北方謙三著 集英社文庫

武田信玄の代名詞とされている「風林火山」だが、信玄が掲げる200年も前の1330年頃、ときは鎌倉時代末期、この宮城の地で「風林火山」と書かれた軍旗をなびかせていた武将がいたことを知っているだろうか。そもそもこの「風林火山」は、周知のとおり中国の孫武が記した「孫子」という兵法書の中の教えのひとつである。その内容は、「風のように速く、林のように静かに、火のように激しく、山のように動かない。」というもので軍隊を動かす際の心得とされるものである。この考え方は、人として世を渡る際にも実に理にかなったものと称されているのと同時に、スポーツにも戦術・戦略を練る際の概念として親和性があり多くの競技において精神的な拠りどころにもなっている。過去に私も高校教員として運動部活動を指導してきたが、かくのごとく臨機応変に戦況そして人生を見定める力をつけてほしいと願い諭してきた。


正しくは「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」と表記されるが、この旗を最初に掲げた男は、先述の通り、宮城、多賀城にいたらしいのである。しかし、多賀城に政庁が創建されたのは奈良時代の724年であり、約300年の時を経てこの地は平定し、その後、政庁は荒廃している。ではなぜ、さらに300年後の多賀城にこの武将は登場したのか。詳しい書物がない中で、北方謙三が史実に基づき描いた「破軍の星」という小説にたどり着いた。

彼の名は北畠顕家(きたばたけあきいえ)、実は武将ではなく天皇家の末裔にあたる公卿で、幼い頃からその才覚が認められたエリート貴族である。南北朝の動乱を招いた後醍醐天皇による建武の新政以降、再び勢力を持ち始めた東北地方の豪族を抑えるため、弱冠十六歳にして地方統治機関となった陸奥国の国府、多賀城に入った。顕家は繊細かつ大胆で人心掌握に長けており、東北地方の主だった実力者を次々と服従させ自身の配下に置いていき、わずか一年ほどで東北を安定に導いた。

しかしその矢先、後醍醐天皇の政策に不満を持った足利尊氏が謀反を起こし京都を占領する。すぐさま顕家に足利討伐の命が下るが、この若きプリンスは見事に百戦錬磨の足利尊氏を打ち破り九州へ追いやることに成功する。任務を完遂させ多賀城に戻る顕家。そして物語はクライマックスへと入っていく。


この本の読後、顕家の清々しい戦い方に胸を打たれ、多賀城市にある東北歴史博物館にゆかりのある資料がないかすぐに足を運んでみだ。しかし、見つけたのは展示ブースの長い長い多賀城史の年表の中にたった1行、「北畠顕家多賀城に入る」ただそれだけだった。多賀城の後に城を構えた福島県の霊山(りょうぜん)には彼を祭る立派な神社もあるというのに、あまりの軽い扱いに愕然とした。ただこれには歴史作家、司馬遼太郎も、彼は多賀城政庁跡の上に居を構えたのではなく、当時の状況から推測して城は現在の仙台市岩切付近だったのではないかと語っている。資料が乏しく諸説あるため、地元多賀城では元城主としての愛着が湧きにくいものと思われるが、彼の活躍いかんによっては室町幕府自体が成立せず、日本史そのものが大きく変わっていたかもしれないという儚くも切ない壮絶な歴史ドラマが宮城の地にあったのだ。

宮城県を「風林火山発祥の地」として彼の功績を称えたいほど一読の価値がある一冊だ。

2026年1月16日金曜日

【TORCH Vol. 167】スポーツから行動経済学を学ぶ

 

スポーツ情報マスメディア学科 助教 吉村広樹


書籍「行動経済学が勝敗を支配する」(著者 今泉拓氏)をご紹介したいと思います。

本書は、心理学と経済学を融合させた「行動経済学」の視点から、スポーツにおける意思決定のメカニズムを鋭く分析した一冊です。著者は、行動経済学において、スポーツのデータは「人間心理が凝縮された宝庫」であると述べています。極限のプレッシャーがかかるスポーツの現場では、人間の本質的な心理傾向が如実に表れるからです。本書を通じて明らかになるのは、どれほど訓練を積んだプロのアスリートや審判であっても、「つい不合理な選択をしてしまう」という驚きの事実です。


本書は、各章ごとに1つの「認知バイアス(思考の偏り)」を取り上げ、多様なスポーツ事例を題材に解説する構成となっています。単なる事例紹介にとどまらず、これらの認知バイアスを理解し克服することが、最終的な競技力の向上につながるという実践的なメッセージが込められています。本書で紹介されているバイアスの中から、特に興味深い2つの事例を紹介します。


1つ目は損失回避バイアスです。本書で紹介されているゴルフを題材にした事例をご紹介します。人間は損を嫌う生き物であるため、「バーディー=得」、「ボギー=損」と意識し、バーディーを取ろうと難しいパットに挑戦するよりも、ボギー(=損)を嫌って安全なパットをする可能性が高いと提唱されています。本来、ゴルフはボギーの少なさやバーディーの多さを競う競技ではありません。18ホールを回って最終的に少ない総打数であることが最も重要なはずです。しかし、トッププロであっても損失の恐怖が不合理な慎重さを招くことを示しています。


2つ目はフレーミング効果です。サッカーと野球(MLB)では、ビデオ判定によって判定が覆る確率が大きく異なります。これは「誰が」「どのような枠組み(フレーム)で」判断するかが影響しているようです。サッカーは、主審自身が映像を見て最終判断を下し、MLBでは、 別のスタッフが最終判断を下す。というフレームになっています。主審が自分自身で映像を確認する場合、「自分の判定は正しかったか?」という疑いの目で再確認することになります。「疑いのフレーム」を通して再度プレーを確認する事で、判定が覆る可能性が生まれるのです。同じプレー映像でも、どのような心理的枠組みで見るかによって結果が変わることを示唆しています。


本書は、スポーツのあらゆる場面における意思決定の裏側で、いかに多くの「不合理な意思決定」が行われているかを教えてくれます。

 

人間である以上、バイアスから完全に逃れることは難しいかもしれません。しかし、少しでも行動経済学の知見を取り入れ、自分たちの陥りやすい罠を理解することで、冷静な判断が可能になり、結果として競技力が向上するかもしれない――本書は、そんな希望と新たな視点を与えてくれる本です。皆さんもぜひ一度、読んでみてください。

【TORCH Vol. 166】なぜ学術英語論文を読み, 英語で論文を書くのか

 

                         体育学科 講師 金 瑞年

はじめに

私たちは今日,書籍,新聞紙,テレビ,さらには SNS など,多様な媒体を通じて新しい知識や情報を得ることができる.それでは,仮にこれらの情報媒体が存在しなかったらどうなるだろうか?また,これらの媒体の大きな違いは何だろうか? 言うまでもなく,「情報伝達の速度」と「影響の及ぶ範囲」であると思われる.本稿では,「なぜ学術英語論文を読み, 英語で論文を書くのか」という題にして,これまでの自分の経験を踏まえながら述べていきたい.

  1. なぜ学術論文を読み,どのように読むのか

学術論文とは,科学研究によって得られた新たな知見を,指定されたフォーマットや学術誌の投稿規定に沿って論理的に記述した文章のことである.その中心には,【問題提起】とそれに対する【問題解決】の構造が明確に存在します.

【問題解決】の構成は,「○○という問題が存在しているため,本研究ではその解決を試みた」という形で提示される. たとえば,日本の昔話「モモタロウ」を例にとれば,物語の大筋は,「鬼が村人を苦しめた」という問題を「モモタロウが剣で退治した」というものである.ストーリーの構造が明確であるため,子どもから大人まで容易に理解できるのである.一方,なぜ英語論文を読むべきなのか? 日本語の論文だけではだめなのか? 簡単に言えば,英語で学術論文を書く人は多い(情報が多い).つまり, 最新の研究成果は主に英語論文として公表されるため,大学での学習や研究においては,何らかの英語文献や資料を読むことが不可欠である.しかし,初めて学術論文を読むのは,誰にとっても大変な苦労を伴うと思います.ここでは,私自身の経験にもとづき,英語論文の読み方について,基礎の基礎から話を進めていきたい.

私が英語論文をまともに読んだのは,博士課程 1 年目に初めて研究計画書を作成したときである. 当時,研究計画書の枠組みやどのように内容を展開させていけばいいのか,全く分からなかったため,同分野で既に発表されている英語論文を読んで,最低限把握すべき内容は次のとおりである.

    • Introduction・背景」部分で執筆者がどう論理展開しているか

    • 自分のアイデアとの重複と相違点はどこにあるか

    • どこまでわかっていて,どこがわかっていないのでしょうか

    • 論文で使われる専門用語の使用方法とその定義

    • 結論

    • 参考文献 (自分の興味に関連する情報を探す際に有用です)

補足:ある論文を読むべきか,読むべきでないかを, 素早判断するポイン

  1. 論文を読む目的を明確にする(Aim)

    • 読みたい論文が自分の研究テーマや関心に合致しているのか?

    • 論文から何を知りたいのか?

  2. タイトルを確認する(Title)

    • タイトルは,その研究の最も重要なメッセージを表している.

    • 良いタイトルは,研究対象・問題・キーワードなどを反映する.

  3. 研究の出発点(Motivation)を把握する

    • 一般的に,論文の冒頭にある要約は,論文全体の概要を示し,研究モチベーションを把握できるため,読者は,その論文を続けて読む価値(要性)があるかどうかを, 判断することができる.

  4. 考察(Discussion)を確認する

    • 考察の最も重要な目的の一つは,イントロダクションで提示したリサーチクエスチョンを踏まえながら、観察された現象(研究結果)について議論するセクションである.

まとめ

最初にある程度の専門用語や背景知識が分かるのであればそれでいいと思います.

  1. なぜ英語で学術論文を書くのか

まず,「なぜ論文を書くのか?」について触れておきたいと思います.私たちはそれぞれ唯一無二の存在であり,異なる教育的背景を持つため,同じ問題に対しても多様な考えやアプローチが生まれる.したがって,論文執筆の動機は人それぞれである.次に述べるのは,私の個人的な考えですが,あなたが考えるヒントになるかもしれません.

    • 修士・博士号取得を目指す

    • 研究活動の初歩をやってみる

    • 研究の過程で得られた経験や成長を重視する

    • 自らの考察の妥当性を他者に認めてもらいたい

    • キャリア形成や昇進のために執筆する

私の場合は,知的好奇心の追求と科学的真理の探究,そして新たな知見や技術を社会に還元することにより,人類に貢献したいという思いが根底にある.


では,「なぜ英語で学術論文を書くのか?

紙面に限りがあるため,要点を以下に簡潔にまとめる.


    • 学術および科学研究に関する論文や著作の約 9 割が英語で書かれてい.

    • 英語は長年にわたり学術出版と国際研究交流の主要言語である.

    • 世界の多くの大学・研究機関では,国際ジャーナルへの英語論文発表が,採用・昇進・評価・学位取得に直結している.

    • 世界のトップレベルの大学や研究機関の多くが英語圏に位置し,新しい知識や技術へのアクセスが英語を通じて行われやすい.

    • 英語は科学界の共通語であり,研究成果を迅速かつ広い範囲へ伝える最も効果的な手段となっている.

おわりに

研究とは, 観察・実験を通して新しい知を生み出し, それに基づく理論や技術により,人類社会の発展や生活の「質」の向上に寄与する営みである.しかし,論文を読むも論文を書くも,ここで強調したいのは,大部分の研究領域は試行錯誤の積み重ねによって進歩しており,科学に「絶対の正解」は存在しない.たとえ高い評価を受けた研究であっても,後続・将来の研究で修正されたり,異なる解釈が示されたりすることは珍しくない.したがって,学部生・大学院生・若手研究者を問わず,「批判的に読め!」姿勢が重要となる.これは,新しい研究課題を発見し,既存の知識の空白を埋める上で不可欠である.


【参考文献】

1 佐藤春彦. (2019). なぜ英語で論文を書くのか:5 つの動機.理学療法, 46(4), 289-293.

2 English As the Language of Research and Worldwide Academic Journals V. Laxmi Tulasi et al. DOI: 10.54850/jrspelt.9.47.001


【推薦図書】

1] 近江幸治:学術論文の作法・論文の構成・文章の書き方・研究倫理(3版),成文堂, 出版年月日(2022/01), ISBN1:9784792327767

2] 石 圭:論文・レポートの基本 : この 1 冊できちんと書ける! 実業出版社 (2024 2 16 ),ISBN-10: 4534060807


Please feel free to contact to me if you have questions on this essay and more information about me is available at https://researchmap.jp/ruinian.jin

e-mail: r-jin@sendai-u.ac.jp

2025年12月7日日曜日

【TORCH Vol. 165】「思い出の本との再会」 

                                                            現代武道学科 教授 伊藤 晃弘

 某月某日、仙台大学図書館の各書棚をじっくり探索していた時のこと、「えっ?」なつかしい本と三十数年ぶりの再会を果たしたのです。島根県の片田舎から就職で東京へ、数年が経った頃に仕事で区役所に行き、時間に余裕もあったことから近くの図書館に立寄りました。もろもろの不安やストレス解消だったのか、はたまた何か刺激を求めていたのか、記憶も定かではありませんが、本のあら捜しをはじめました。これまで学校の教科書以外で本に接する機会も少なく、大袈裟ですが考えてみますと、小・中学校時代の夏休み課題「読書感想文」以外無いのでは!と思うほどです。

 しばらく見ていると、「心のささえに」の題名で厚さも手頃の本が目に入り、目次が約30あり、それぞれの章は4から5ページで挿絵ありのものでした。館内で読み始めたところ、非常に読み易くはまってしまい、時間の経過も忘れ全て読み終えてしまいました。

 本を読んで感銘を受けた、指標になった、人生が変わったなどの経験をされた方もおられるかと思います。「竜馬がゆく」や「坂の上の雲」などで有名な司馬遼太郎は、長編小説作品を多数執筆していますが、電車の通勤時間や移動時間を有効活用し本に親しんでもらうための短編作品も数多く執筆したといわれています。まさにこの本は、通勤時間や僅かな時間で効率的に読めるものであり、身近な人との交流、日頃の生活での出会いや場面を通じて感じたことが素直に記述され、かつ端的に表現されており、読んでいて「このような感じ方、考え方もあるんだ」との思いを巡らせてくれた本であることに加え、強く記憶に残っている本の一冊でした。この本との再会に感激するとともに、まさかの出会いに「本当にありがとう」の瞬間で、当然すぐに貸出を受け、懐かしくじっくりと読ませていただきました。

 本の紹介やTV番組などで、「人生に大きく影響を与えてくれた本」であったり、「感銘を受けた偉人や師の一言」等を見聞きすることがありますが、自身の心に刺さった言葉、影響を与えてくれた言葉は生涯忘れないものだと思います。この本を通じて強く感じたことは、「自分自身を知ることの重要性、豊かな心とは、そして自分の心のささえは何?」を考えさせてくれ、その後の仕事や生活に大きく影響を与えてくれたと思っています。いろいろな人と出会い、さまざまな出来事を経験しますが、悩んだり困難な場面に遭遇した時は、勢いや衝動的に判断する前に一旦立ち止まり、時には(後悔先に立たずの考えで)自分を見つめ直す時間があってもよいと思います。パスカルの「人間は考える葦である(考えることこそが人間に与えられた偉大な力である)」の言葉のとおり、考えて出した結論であるからこそ自分自身が納得できるものとなります。(安全安心につながる)

 自身の健康を守ること、社会のマナーやモラルを守ること、自身や家族の生活を守るべく仕事をして収入を得ること、そして自己及び周囲の人の命(危険場面の回避)を守ることなど、全ての行為が自己及び社会の安全安心につながることになると考えます。すべての人が是非、自身の「心のささえ」となる本を見つけ、そして力となる言葉を見つけてほしいと切に願います。

 

【TORCH Vol. 164】「私に勇気をくれた作品紹介」

                                                                             体育学科 講師 江尻 沙和香

 私は幼い頃から本を読むことが大好きでした。幼少期には両親が絵本をたくさん読み聞かせてくれたり、多くの本を買い与えてくれたりしたことで、自然と読書が生活の一部になりました。小学生から大学生にかけては、スポーツ関連の単行本や雑誌、エッセイ、ケータイ小説、ファッション誌など、幅広いジャンルに興味を持って読み漁りました。現在はそれらに加えて、ビジネス書や教育に関する文献にも関心を持つようになっています。 その中でも特にエッセイを読むことが多く、著者の生き方や考え方に触れることで、自分の凝り固まった思考が柔らかくなったり、新しい発見につながったりするのが魅力だと感じています。そして特にエッセイの中でも、林真理子さんの本が大好きです。代表作には、『ルンルンを買っておうちに帰ろう』、『野心のすすめ』、『最高のオバハン 中島ハルコはまだ懲りていない!』などがあり、ドラマ化された小説も手がけています。もちろん、ドラマも欠かさず全話視聴しました。林真理子さんの作品は、女性の視点から仕事や結婚にまつわる葛藤や、人間の繊細な心理を率直に描き出しています。さらに、巧みな文章表現によって、思わずクスッと笑ってしまうようなユーモアが散りばめられています。その中でも、今回は、私自身が勇気をもらった1冊をピックアップし、その中で最も印象に残った章を紹介します。

紹介本タイトル:『過剰な二人』 林真理子×見城徹

●第3章最後に勝つための作戦

「人がやりそうにないことをやる」 pp.138-142
私自身、幼少期から突拍子のないこと、他人から「えっ⁈」と思われるような言動をするタイプです・・・。しかし、自信が持てない案件では、つい周囲と似たような形にまとめてしまい、後から他の人がオリジナリティ溢れたアイデアを出してしまい、「自分の考えを素直に出せば良かった」と後悔したことが多々あります。似たような経験を持つ人はきっと多いのではないかと感じます。しかし、この章を読むと、自分らしさを出すことへの勇気が湧きました。その内容を以下に要約しました。

『人がやりそうにないことをやる、これは林真理子さんが世に出るための戦略だった。なんとなく思いついたアイデアは、たいていありふれていて、いくら自分が良いと思っても、同じようなことを考える人は多々いる。林真理子さんは、尊敬する超一流コピーライターの目に留まるために、服装、髪型、出される課題に対して必死に工夫を取り入れた。そして、作詞が課題となった際に、他の人が書いてくるのであろう詞を予想し、違う雰囲気の詞を書き、「絶対にウケるはず」と意気込んだが、まさかのしーんと静まりかえり、誰も笑わないという状況だった。しかし、その尊敬する超一流コピーライターだけは、「君、面白いよ」とほめてくれた。その出来事が大きな転機となった。やはり、何かを持つということは大事である』

 私は、この章を読んだ後に、自分らしさ、独自性を出すことは素晴らしいことであり、自由に生きるための必須事項だと感じました。現在社会人である私も、今後社会に飛び出す大学生も、「こんなことを発言したら他人から変な風に思われるかも・・・」、「自分の考え方は独特すぎるかな・・・?」と迷っても、まずは自分の考えを第一に尊重し、発信して欲しいと思います。その経験が、後々自分の成長に大きな影響を与えることもあり得ます。また、独自のアイデアを打ち出すことで、組織に新しい風を吹かせることにも繋がる可能性もあります。たとえ誰からも共感が得られなくても、自分の本音や考えに向き合い続けることは大切であり、きっと自己成長に繋がります。この章は、これから社会人を目指す大学生に勇気づける内容だと思い、紹介しました。

●第4章「運」をつかむために必要なこと

「運はコントロールできる」 pp.198-202
 このページの冒頭に、「これから私は、人生における大きな真実を、はっきり言おうと思います。私は、運命の正体を知っています。それは意志なのです」と書かれていました。私は初めてこの文章を見た時に、「運って、偶然じゃないの⁉コントロールなんかできないでしょ」と疑いました。しかし、続けて読んでいくと「確かにそうだわ・・・」と納得してしまいました。その内容を以下に要約しました。

『運とは自分からつかみに行こうとしなければ通り過ぎてしまう。本当はこうなりたい、今の状態は不本意だと思っていても望むような変化が起きない場合には、実はその状況は自分自身が作り出してしまっているのではないか?自分から何もしなければ何も起きない、まじめにじっと待っていれば、いつか幸運がめぐってくるなどというのは、おとぎ話にしかすぎない。おとぎ話から現実の世界に飛び出すこと、これが意志の力で運をつかむことだと思う。幸運とは、強い意志を持つ人にめぐってくる』
私はこの章を読んだ後に、自分が「ツイてる!」と思える出来事が起こった時期は、やりたいことに対して常に敏感でアンテナを張っていたことを思い出しました。逆に、中途半端な頑張り方をしていた、考えているだけで行動に移さない時間が長くなればなるほど、「もういいや」と冷めて終わってしまう経験もしました。また、周囲の成功している人達の中で、「自分は運が良かった」と言っている人、客観的に見て「この人、運が良いよなー」と見える人ほど、実は強い意志を持って他人の見えないところで行動し続けていたのではないか?と気づきました。

 以上、私が勇気をもらった1冊、最も印象に残った章についての紹介でした。林真理子さんの全作品おすすめですので、ぜひ手に取っていただきたいです。また、読書は、教養を深めると同時に、心を落ち着かせることも実感しています。
皆さん、ぜひ読書を楽しんでください!

本タイトル:『過剰な二人』 林真理子×見城徹
発行者:渡瀬昌彦
発行所:講談社

2025年11月7日金曜日

【TORCH Vol. 163】「図書館を活用し学びを深める」

                        健康福祉学科 助教 田中亨

学生の皆さんは普段本を読んでいますか?
定期的に本を読んでいる人もいれば、本を読むことが苦手(馴染みがない)な人もいるのではないでしょうか。分厚い本や文字だけの本を読むことは億劫になってしまうかもしれません。

まずは「興味が湧く」「読みやすい」本や雑誌を見つけてみるのはどうでしょうか。

私が体育大生の頃から、楽しくよく読んでいたのが雑誌「Tarzan」でした。毎回テーマが異なり、健康情報、トレーニング、コンディショニング、トレンド情報など様々な内容が含まれています。内容が簡潔に記載されており、より深くまで知りたいときや信憑性を確認するためにはその分野の本や研究論文を探してみるのも良いと思います。

体育大生の皆さんは将来、体育教員、スポーツクラブ、福祉系、栄養系などの職に就く人もいるでしょう。身体のことについては一つでも多くの知識を持ち合わせておく必要があると思います。

図書館は読書だけでなく、資格試験や採用試験の勉強などにも利用できる場所です。
図書館を活用して、より一層学びを深めていただければと思います。