子ども運動教育学科 教授 中里 和裕
おまけに,本を読むのは大好きなのに,読書感想文を書くのは大の苦手…ということもあって,どうにも筆が進みません。
そこで,今回はとりあえず「本と私」という題にして,これまでに出会ったいろいろな本や作家を紹介してみたいと思います。
記憶に残っている本の中で一番古いのは,幼稚園の頃に父が買い与えてくれた「ピーターとオオカミ」(セルゲイ・プロコフィエフ)。絵本とレコードがセットになっていて,レコードを聴きながら夢中になって絵本のページをめくっていた思い出があります。ちなみにセルゲイ・プロコフィエフはロシアの作曲家で,「ピーターとオオカミ」は彼が子どものために作曲した交響的物語です。主人公のピーターをはじめとして,登場する人物や動物たちには例えば「小鳥」には「フルート」,「猫」には「クラリネット」というように特定の楽器とテーマが割り当てられており,今でもそれぞれのテーマを聴くと絵本の絵柄が思い浮かびます。残念ながら現物が残っていないので,この絵本の作者や出版社も今はもう分からないのですが,現在でもいろいろな出版社から「CD付き絵本」という形で出版されているようですから,読んだことがない(聴いたことがない)という方はぜひ一度手に取って見て(聴いて)ほしいと思います。
次に思い出に残っているのは漫画なのですが,ムロタニツネ象さんが執筆された「漫画日本史」(集英社刊)です。これは小学校3年生の頃に父が買い与えてくれたものでしたが,当時私が住んでいた名古屋市緑区鳴海町というところが,戦国時代には織田信長と今川義元が戦った「桶狭間の戦い」の前哨戦が繰り広げられた古戦場だったということもあり,歴史が身近に感じられる土地柄も相まって,私はこの本をきっかけに大の歴史好きとなったのでした。この本は既に絶版になっていますが,ムロタニツネ象さんはその後も学研から多くの歴史漫画を執筆されていますので,絵を見ると「あぁ,この漫画を描いた人か」と思い出される方も多いのではないかと思います。
もう一つ,小学生の頃によく読んでいたのが「童話」でした。坪田譲治,宮沢賢治,壺井栄,小川未明,浜田廣介,新美南吉といった日本の童話作家が好きで,中でも新美南吉の叙情的な童話が大好きでした。新美南吉さんの童話は小学校の教科書に載っている「ごんぎつね」が有名ですが,私のオススメは絵本の「手ぶくろを買いに」(新美南吉作,黒井健絵,偕成社刊)です。黒井さんの描く絵は南吉の作風に最もマッチしていると私は勝手に思っています。
ここまで書いたらもう結構な文字数になってしまったので,最後に中学時代の思い出を紹介します。私が人生の中で最も本に親しんだのがこの頃でした。毎日のように学校の図書館に通っては本を借りて読み,年間の読書量で校内1位になったこともありました。この頃読み漁っていたのは,SF(サイエンスフィクション)と世界の神話,民話でした。
当時のSFは今ではもう「空想科学小説」というよりは「古典」に分類されるような作品ばかりですが,海外の作品では,H・G・ウエルズ,ロバート・A・ハインライン,アーサー・C・クラーク,アイザック・アシモフといったSF作家の作品をよく読んでいました。日本のSF作家ではやはり星新一さん,小松左京さん,筒井康隆さんといったところでしょうか。
世界の神話や民話への興味・関心は,実はその後成人してからのカール・グスタフ・ユングの分析心理学との出会いにつながっていくことになるのですが,そのお話はまた次の機会にしたいと思います。
最後に,今回このコラムを書かせていただいて,最近読んでいるのは専門書ばかりで,「心を豊かにしてくれる本」をちっとも読んでいないことに気付きました。今度の休みには久し振りに地元の図書館に行ってみようかな…と思っています。