2016年4月11日月曜日

【TORCH Vol.085】本を読まない理由

金 賢植

「開巻有益」:本を開けば必ず得るところがある。

大学生の読書時間の減少が浮き彫りとなっていることから、読書の楽しさ、重要性、本を読む方法などの読書に関する論議が高まっています。統計をみると、2014年に公表された「第49回学生生活実態調査」の報告では、全国の国公立、私立大の学部学生8,930人の1日の読書時間は、平均26.9分という結果が報告されており、読書時間ゼロの学生は、40.5%に達したということです。この結果は、かなり深刻な問題だと思われます。   

本を開けば必ず得るところがあるのに、われわれは、なぜ、本を読まないことになったのか。大部分の学生は、「本を読む習慣が身についていないから」「読む時間がないから」「本ではなくてもスマートフォンやタブレットから簡単に必要な情報を得ることができるから」と回答すると思います。

私は、われわれが本を読まない理由について考えてみました。その結果、

一つ目、単に文字を読むことだけだったのかもしれません。本を読む時間の大部分を、教科書などを学習資料の読む時間に費やし、試験に必要な本だけを読むことが多かったのだと思います。試験用の本と問題だけを見て育った世代にとって、自発的な読書は、かなり難しいことかもしれません。

二つ目、書くことに慣れていないということがあるかもしれません。読書が強調していますが、作文には、興味が涌かないのかもしれません。作文とは、本人の考えを自分の言葉でまとめる技術と言えます。作文を書くためには、本のジャンルに関係なく、多くの読書量と様々な経験が必要です。

読書と作文は一つです。不可分の関係です。読書が、肥沃な土壌を作ることなら、作文は、丈夫な木を育てることです。木は自分自身です。どんな逆境にも揺れない木になるには、様々な本を読んで、自分の哲学を書くことです。決して、どちらも無視すべきではありません。

作文のために、本を読まなければならない。読書のためには、作文が必要です!

ps…..卒論の指導をして感じたことは、「自分の考え方を文字に書けない」ことです。読書と作文は不可分の関係なので、多くの本を読むと役に立つと思います。

【TORCH Vol.084】医療従事者以外でも読みやすい救急対応の本の紹介

福田 伸雄

先日、県内の介護保険施設に勤務する介護職従事者を対象に救急対応の研修会を行った。研修会を開催するにあたり、救急対応に関する様々な書籍を読んだ。介護職従事者にも読みやすい救急対応の書籍を探したが、医師や看護師といった医療職を対象にしたものしか見当たらず、困っていた時に、医療職以外でも分かりやすく書かれている本を発見した。それが今回紹介する「いざというときに役立つマンガでわかる救急・救命処置―パワーアップ版」である。

救急とは、突然の病気や怪我などによって引き起こされる生命や身体を脅かす危機的状態であり、場合によっては、そこに居合わせた人によって予後が大きる変わる可能性があることを私はこれまで救急看護の臨床場面で目にしてきた。本書は、歯科衛生士を目指す主人公のユキとその家族が経験する救急場面をストーリーマンガで解説しているため、専門職以外の人にも分かりやすく書かれている。そのため、救急場面に遭遇する可能性のある介護福祉士を目指す学生、教職を目指す学生、スポーツの指導者となる学生などにお勧めしたい本である。

【TORCH Vol.083】『子どもに贈りたい130の言葉』~『子どもが育つ魔法の言葉』

針生 弘

言葉には不思議な力があります。人々の様々な経験の中から生まれた豊かな言葉は,時として私達に希望や勇気を与えてくれることがあります。この『子どもに贈りたい130の言葉(佐々木勝男 民衆社)』には,著名人や現在様々な分野で活躍されている方々のはげましの言葉やメッセージが載っています。作者は,この本の中にある「言葉」を導きの糸として,言葉を引用した本や作品に直接触れることで,より豊かな「言葉の花束」を手にしてほしいと述べています。本書は「そのままで;ありのままが一番いい」「自信をもって;その気になれば,何だって」「友だちのこと;手をつないで,歩きだそう」「信じること;信じる心はたからもの」など10の括りで構成されていますが,ここでその中からいくつかの「子どもに贈りたい言葉」を紹介したいと思います。

・「私は実験において失敗など一度たりともしていない。これでは電球は光らないという発見を,今までに二万回してきたのだ。(トーマス・エジソン)」

・「私がノーベル賞をいただくきっかけとなった発見をすることができたのは,間違った薬品を混ぜた試料を,もったいないと捨てずに使ったからですが,そう思ったのは,子どものころから耳にたこができるほど,もったいないと言われ続けてきたからなのです。(田中耕一『生涯最高の失敗』朝日新聞社)」

・「大変な仕事だと思っても,まずとりかかってごらんなさい。仕事に手をつけた,それで半分の仕事は終わってしまったのです。(アウソニウス;古代ローマの詩人『よい言葉は心のサプリメント』二見書房)」

・「人間というものは,本当に一人では生きることができないものです。お互いに支え合って人という字ができているわけです。人間という字は人の間と書きます。(三浦綾子『永遠のことば』主婦の友社)」

・「屈しない心は折れる。よく萎える心は折れない。(五木寛之『養生の実技』角川書店)」

・「国の魅力とは,実はその国に住む人の魅力ではないかと思うのです。この国に暮らす人々が魅力的であれば国そのものが魅力的になりますし,人々に魅力がなければ国にも魅力などなくなります。つまり国とは人と言えるかも知れません。(さだまさし『本気で言いたいことがある』新潮新書)」。

また,本書には,「子ども叱るな 来た道だもの 年寄り笑うな 行く道だもの(妙好人 永六輔『大往生』岩波書店)」や「ほかの人のために自分の時間を使うということは,自分の時間がうばわれて損をすることではないのです。それどころか,他のことでは味わえない特別な喜びで心がいっぱいに満たされるのです。(日野原重明『十歳のきみへ 九十五歳のわたしから』冨山房インターナショナル)」などのように,大人として,親として,教師として,子どもに関わる際のヒントを与えてくれるようなものも多くあります。一部が紹介されているドロシー・ロー・ノルトの詩「子は親の鏡」は,特に有名ですが,その全文については「子どもが育つ魔法の言葉(ドロシー・ロー・ノルト PHP文庫)」の冒頭に載っています。


   子は親の鏡

けなされて育つと,子どもは,人をけなすようになる

とげとげした家庭で育つと,子どもは,乱暴になる

不安な気持ちで育てると,子どもも不安になる

「かわいそうな子だ」と言って育てると,子どもは,みじめな気持ちになる

子どもを馬鹿にすると,引っ込み思案な子になる

親が他人を羨んでばかりいると,子どもも人を羨むようになる

叱りつけてばかりいると,子どもは「自分は悪い子なんだ」と思ってしまう

励ましてあげれば,子どもは自信を持つようになる

広い心で接すれば,キレる子にはならない

誉めてあげれば,子どもは,明るい子に育つ

愛してあげれば,子どもは,人を愛することを学ぶ

認めてあげれば,子どもは,自分が好きになる

見つめてあげれば,子どもは,頑張り屋になる

分かち合うことを教えれば,子どもは,思いやりを学ぶ

親が正直であれば,子どもは,正直であることの大切さを知る

子どもに公平であれば,子どもは,正義感のある子に育つ

やさしく,思いやりを持って育てれば,子どもは,やさしい子に育つ

守ってあげれば,子どもは,強い子に育つ

和気あいあいとした家庭で育てば,

子どもは,この世の中はいいところだと思えるようになる


ドロシー・ロー・ノルトは,この「子どもが育つ魔法の言葉」の中で,「子は親の鏡」の詩を一行毎に取り上げ,子育てで大切なことを説き,子どもへの接し方を具体的に書いています。そして愛情と思いやりに満ちた豊かな人間関係の築き方を教えてくれています。良い親,良い教師,よい上司となるためにはどうしたらよいのかという知恵も学ぶことができます。特に,子どもに関わる仕事に就きたいと考えている学生の皆さんに,この『子どもに贈りたい130の言葉』『子どもが育つ魔法の言葉』の一読をお勧めしたいと思います。

【TORCH Vol.082】読書と私

平良拓也

私は読書が好きである。思えば小学生の頃は、家の近くに図書館があったこともあり、暇があれば一人で遊びに行っていた。読んでいたのは専ら野球選手の偉人伝風漫画であったが、それをきっかけに本を読むことが好きになったのかもしれない。現在は専門書を読むことが多いが、それ以外にも自宅で時間があれば本を読んでいる。特に好きなジャンルもなく、小説や新書、雑誌、漫画など気になったものを手に取る。週に一回以上は本屋に行くことが気分転換となっている(図書館のブログなのにごめんなさい)。気分転換が出来ることもあってか、本屋には、特に買いたい本がある訳でもないがついつい立ち寄ってしまう。出張先や待ち合わせの空いた時間にもよってしまう。本屋では、新刊や特集コーナー(最近では実写化された本のコーナーなど)、雑誌コーナーなどを見て回る。タイトルや表紙に一目ぼれして購入する時もあれば、贔屓にしている著者の新作(私の場合は文庫でしか買いませんが)を手にすることもある。私の購入方法はCDを買う時と似ているのかもしれない(今はCDを買う人も少ないようですが)。面白いことに(個人的意見)、このように一目ぼれして購入した本の多くが、購入時の悩みや興味などを反映している(気がする)。人に本を薦めるのは恥ずかしいので、今回は、私が本屋でタイトルや表紙に一目ぼれし、今も印象に残っている本を紹介する。

     アレックス・シアラー著/金原瑞人訳「チョコレート・アンダーグラウンド」求竜堂
     有川浩「図書館戦争」角川文庫
     荻原浩「神様からひと言」光文社文庫
     岡田斗司夫「いつまでもデブと思うなよ 」新潮新書
     ジョン・C. マクスウェル著/渡邉美樹監訳「「戦う自分」をつくる13の成功戦略」三笠書房
     遠藤彩見「給食のおにいさん」幻冬舎文庫

 ①は高校3年生の夏に図書館で借りた本である。高校時代は部活動に専念しており、約3年ぶりに手にした本である。政府よりチョコレート禁止令が発令され、世の中のチョコレートや甘いものが禁止されてしまう。そこに3人の少年少女が立ち上がり自由とチョコレートを取り戻す戦いが始まるというものである。当時は栄養士になろうと決意したころであり、食べ物(特に甘いものであるが)を禁止することは難しいと感じた一冊だった。

 ②戦うという意味ではこの「図書館戦争」も似ている。公序良俗を乱す表現を取り締まる『メディア良化法』が制定されたことによる、行き過ぎた検閲が行われるようになり、良書を守るための組織・図書隊に入隊した女性の話である。戦争というワードが重い内容の雰囲気を思わせるが、ラブコメディになっておりとても読みやすかった。シリーズは全6巻だが23日で一気読みしてしまった。この本をきっかけに作者の有川浩さんの著書は読み続けている。

 ③新しい視点を持つように教えてもらった一冊である。入社早々、販売会議でトラブルを起こし、リストラ要員収容所と恐れられる「お客様相談室」へ異動となった男性。クレーム処理係であるお客様相談室では、無理難題や文句を言われる日々でストレスがたまってしまう。しかし、お客様のクレームは神様の言葉であるという考え方を教えてもらい男性の考え方が変わっていくという話である。

 ④10年程前になると思うが、レコーディングダイエットが流行したときに読んだ本である。日々食べたものを記録することで、食べ物への興味関心が生まれ、食への意識が高まることで体重減少につながったという著者の経験が書かれた本である。スポーツ選手もトレーニング日誌など記録することが多く、栄養指導に活かせるのではと考えさせられた一冊であった。

 ⑤やる気を出すために読む本である。院生時代の将来に思い悩んでいた時期によく読んでいた本である。成功のための戦略が13に分けて紹介されている。私がとても印象深いのは成功戦略12の「つき合う人を厳選する」である。良い影響を受けるプラスの人間関係を構築するためのアドバイスなどが記されている。

 ⑥栄養士養成施設で働いている時に読んだ本である。主人公は、高い技術を持ちながらもレストランでの人間関係により仕事を辞め、新たに学校給食の調理員として働き始めた男性である。そのほかの登場人物として男性の学校栄養職員が登場する。男性の学校栄養職員と小学校の現場を描いた小説を初めて読んだが、学校の栄養士として働きたいと思わせるような本であった。もう少し早く読んでいたら学校の栄養士を目指していたかもしれない。

 学生のみなさんも、自分に印象に残る本が見つかるといいなと思います。図書館や本屋に行った時に、ふと目にした本を手に取ってみてはいかがでしょうか。