飯塚公良夫
仙台大学での契約任期もあと僅かとなってしまったが、この4年半の間に面識を持った学生たちの中に、警察官になることを嘱望している学生が決して少なくないことを知った。巷では、今どきの学生ということで、自由を謳歌する余りルールもマナーも守らない学生のことが何かと話題に上っているが、さすがに体育系大学だけのことはあると思い知らされたのが、この警察官や消防官を目指す学生が決して少なくはないという事実であった。しかし、私が着任した平成23年4月現在、目指す学生が多い割には、前年の平成22年度の卒業生が全国の警察官採用試験に合格した人数は僅かに10数名に過ぎず、地元の宮城県警察については現役合格が2名という寂しさであった。そのため、当時宮城県警察官の受験者が現役、OBを含めて48名もいたという事実、そして平成23年度も現役、OBを含めて44名の希望者がいるという事実を踏まえ、幾分でも崇高な目標を掲げる学生の思いを叶える力になろうと、その頃から、研究室を開放して警察官・消防官等採用試験受験者に対する受験勉強の相談、二次試験対策の教示、面接実習等を行うこととした。
その結果、平成23年度は宮城県警察に現役3名とOB1名の合計4名が合格する等全国の警察の採用試験では警察官に21名、警察職員に1名の合格者が誕生したが、私が関与した受験者の学生23名中では11名が合格した。翌平成24年度にも全国の警察官採用試験に私が関与した学生16名中9名が合格し、平成25年度には関与した学生17名中全国の警察官採用試験に10名、消防官採用試験に2名が合格、平成26年度には関与した学生20名中全国の警察官採用試験に12名、消防官採用試験に1名(警察官と併願)が合格した。私が関与していない学生を含めると、平成23年度以降は、毎年20名以上の警察官・消防官採用試験合格者が誕生している。
これら学生の警察官等採用試験への取り組みについて、関与した学生に聞いてみると、最も大事なのは第一次試験の教養試験と論文試験であると口をそろえている。この第一次試験の教養試験及び論文試験については、自分がどれだけ勉強したかが合否の有無を左右しており、自分自身でどのような受験勉強をすべきかわからないことが大きな問題となっていた。なぜなら、仙台大学は総合系の一般大学と異なり、体育系大学であるが故のスポーツに特化した教育、そして競技スポーツの実技能力向上を目的とした部活動等の重視により、普段から受験勉強に割ける時間が極めて少ないという問題があったからである。
例えば、総合系の公立大学や歴史ある私立大学では、中学、高校当時から一般教養に関する授業について真剣に取り組むことは勿論のこと、それ以外の時間も受験のための勉強に力を入れなければ合格は極めて難しいが、仙台大学では、特に運動能力の発達している学生の募集にも力を入れていることから、AO入試や推薦入試等により一定の学力があれば入学が可能なことから、どうしても、基礎学力が総合系の公立大学や歴史ある私立大学の学生よりも特に知識・知能面で見劣りすると思われているのが現状ではないだろうか。しかし、仙台大学の学生であっても、しっかりとした将来の目標を持って学ぼうとする意欲のある学生は決して少なくない。ただ、その目標を達成するために必要な勉強方法がわからないだけであると思う。
そのような仙台大学の学生たちが、将来公務員それも運動能力を活かすことのできる警察官や消防官、刑務官、自衛隊員等の実動系の公務員を目指し、なかでも特に希望者が多い警察官や消防官を目指す学生に対し、採用試験の勉強を行う際に活用して欲しいと思う参考書をいくつか紹介してみたい。ちなみに、公務員試験は必ず一般教養試験があり、その職種によっては専門教養試験もあるが、警察官採用試験や消防官採用試験、刑務官採用試験、自衛官採用試験においては、ほとんどが一般教養試験だけであり、専門教養試験も必要とされるのは、東京消防庁における大卒Ⅰ類の消防官採用試験などほんの一部に過ぎない。だから、警察官や消防官等を目指す学生は、一般教養試験対策、論文試験対策を常日頃から行っておくことが大事であり、特に3年次には、当初から時間を十二分に割いて重点的に採用試験に取り組まなければならないだろう。
警察官等の採用試験対策として学生諸君に私が紹介したい参考書は、数多く発行されている参考書の中でも、特に、以下に掲げる参考書である。
①
「最新最強の地方公務員問題・初級」、東京工学院専門学校監修、成美堂出版
毎年度発行、社会科学・人文科学・自然科学・一般知能問題の出題傾向に基づき、高校時代に勉強した基礎知識について詳細な説明がなされており、基礎知識をしっかりと理解するために効果的であると思われる。
②
「最新最強の地方公務員問題・中級」、東京工学院専門学校監修、成美堂出版
毎年度発行、一般知能問題・社会科学・人文科学・自然科学に加え、経済、行政、法律の専門的分野について、短期大学で勉強する程度のより詳細な説明がなされており、大卒程度の採用試験にも十分対応できる知識を習得できる。
③
「最新最強の地方公務員問題・上級」、東京工学院専門学校監修、成美堂出版
毎年発行、地方公務員Ⅰ種(上級)試験に出題される試験内容を踏まえ、政治・行政・社会政策・国際関係・法律関係・経済理論・経済政策・財政学等の他、一般知能問題についてもより専門的な知識を登載しているほか、社会科学・人文科学・自然科学の一般教養分野でも、高校、短大での基礎知識に関してより具体的で詳細な内容の説明を行っている。特に法律・経済分野の説明は、警察官採用試験や消防士採用試験でも出題される内容を登載している。
④
「2016喜治塾直伝!判断推理解法テクニック」、喜治賢次著、高橋書店
知能問題の「判断推理」に関し、具体的な判断推理を必要とする各種の問題について、それぞれの問題の種類に応じた具体的な解き方を順序良く説明しており、その解き方を覚えることによって、類似する問題にも十分対応できる。
⑤
「2016喜治塾直伝!数的推理解法テクニック」、喜治賢次著、高橋書店
知能問題の「数的推理」に関し、数的推理に関する各種の問題を登載し、それぞれのポイントを具体的に説明しているほか、出題傾向に基づき、それぞれの種類の問題の解き方を順序良く説明しており、その解き方を覚えることによって、類似する問題にも十分対応できる。
⑥
「大卒程度 警察官・消防官 新スーパー過去問ゼミ」全5巻、資格試験研究会編、実務教育出版
大卒程度の警察官、同消防官、市役所上・中級、地方中級の採用試験に滞欧する過去問を収録した問題集であり、社会科学・人文科学・自然科学・判断推・数的推理・文章理解・資料解釈の6分野を全5巻にまとめ、6分野それぞれについて、分野に属する詳細な教養科目の重要ポイントを説明した上、これまでに多く出題された問題を数多く登載しており、解答欄では、その理由を具体的に説明し、そこから知識を得ることが出来るようになっている。
なお、①、②、④,⑤の参考書は、最低でもクリアして欲しい。
以上