助教 桑原康平
皆さんは「コーチング」ということばを聞くと、何を思い浮かべるでしょうか?
スポーツに関わっている人ならば多くの人が耳にしたことのある言葉だと思いますが、案外その意味は知らない人が多いのではないでしょうか?そもそも「コーチ(Coach)」とは馬車を意味していて、馬車が人を目的地に運ぶところから「コーチングを受ける人を目標達成に導く人」を指すようになったと言われています。また、コーチングではモチベーションを重視し、主体的な学びを促すことを目的としています。近年ではスポーツにとどまらず、ビジネスの世界でも多く用いられるようになっている人材育成方法です。
しかし、我々教員や学生の皆さんが多く関わっている日本における教育、あるいはスポーツ指導の現場ではどうでしょうか?昨今騒がれている体罰問題が象徴するように、相変わらず知識や技術を伝達すること=コーチングという考え方が根強く残っているような気がします。
個人的な見解ですが、スポーツを例に挙げると、日本のスポーツ指導は管理的な側面が強く、一定の技術を身に付けさせるには効果的な指導といえますが、外部環境が変化し続けるスポーツ(オープンスキルが必要とされるスポーツ)においては効果的な指導をしているとはいえません。なぜならば、指導者が全ての外部環境の変化を把握して対策を選手に講じること、すなわち管理することなど不可能だからです。
それではどうすればいいのか?指導者は、選手にあらゆる外部環境の変化を提示できない代わりに、変化に対応できる人間の育成を図ればいいのです。少し具体的にすると、時々刻々と変化する外部環境に対してその都度適切な判断を下し、行動する人間を育てればいいのです。スポーツのことばでいうと、状況判断力の高い選手を育成することがそれに当てはまると思われます。
と、ここまでは多くの本に書かれていることなのですが、今回紹介する図書には、その先の具体的なコーチングの例やそれに関わる提言がなされています。私自身、指導の現場に日々関わっている者の一人であり、この本を読むと、「うんうん」と共感できることだったり、「そんな考え方もできるか」という新しい発見があったりと、本をあまり読まない私でも興味深く読むことができる一冊でした。コーチングの現場を記した良書ですので、スポーツ指導者を目指す学生には特に参考にして欲しいと思います。
所蔵Information <図書館で探してみよう!>
- ジェリー・リンチ著 「選手の潜在能力を引き出すクリエイティブ・コーチング」 大修館書店 780.7 Ly 図書館1階