講師 賴羿廷
大学では、知識だけでなく人生のあり方についても、主体的に学んでいく姿勢が求められています。しかし、これまで自ら立てていた活動計画がいつの間にか安易な方向に流されてしまい、「自分」に 負けたという悩み・悔しさがありませんか?
実は私自身も学生の頃から大人になった現在でも、よくそういう「自分」という敵に負けてしまいます。どうすれば自分をうまく駆使しコントロールできるかという課題、いつも試行錯誤しながら困っています。目標に向けて思い通りにいかない自分と、どう向き合えばよいのか、小説などの文学作品から学ぶこともありますが、私は、より自分への理解を深められる本や自己改善に繋がる本(いわゆる自己啓発本?)を探して読む傾向があります。
そういうわけで、私は、学生の皆さんにも、その「自分」をコントロール・管理する本を紹介します。その1つは、『スタンフォードの自分を変える教室』という本で、意志力を鍛えて確実に行動できるまでの科学的な方策を明らかにしています。本学図書館のブログ「書燈」を確認してみたら、すでに栗木先生がご紹介しておられましたので、ぜひそちらを合わせて読んでください。(http://shotoh.blogspot.com/2013/02/torch-vol010.html)
もう1つ。今回は私が自分自身への好奇心を満たしてくれた、ポピュラーサイエンスの “Why We Sleep:The New Science of Sleep and Dreams” の本を紹介したいと思います(翻訳版では、桜田直美訳『睡眠こそ最強の解決策である』SBクリエイティブ出版)。私たちの人生の1/3、約25年間以上も占める睡眠ですが、人間の3大欲求(生きるための基本的ニーズ)の中では、一番解明されていないそうです。寝ることを大切にしている睡眠科学者のマシュー・ウォーカー教授が、近年ようやく解明されてきた睡眠について、科学的に分かりやすい例をあげて解説しています。
この本では、「睡眠という難問の謎を解明していく」、「睡眠の効果と睡眠不足の恐ろしさについて見ていく」、「夢を科学的に説明し、夢を見ている人の脳をのぞき見る」、「不眠症を含むさまざまな睡眠障害について見ていく」という4つのパートで構成されています。
私が最も魅了されたのは第2章と第3章:人はどう眠くなっていくのか、寝ている間に脳内にどういうことが起きているのか、私たちにどういう働きかけをしているのか、といった睡眠のメカニズムと役割について触れた部分です。「寝ている時は、外界への認識がなくなるほか時間感覚も失われているということだ」と、“ふむふむ~”誰でも感覚的に判断できることをこのように科学っぽく言われてみると確かに新鮮です。また、著者は「『睡眠紡錘波』は夜間の見張りをする兵士のようなものだ、外界の音を脳から遮断し、眠りをまもっている」というように、私の想像を膨らませてくれる表現で説明してくれますので、最新の睡眠科学を読んでいるはずなのに、全然苦にならずに読み進めることができます。
今まで、寝る時間が惜しく感じることもありましたが、この本を読んで睡眠という自然な行為が、心身にとって、とても大切であることが分かりました。私は、ついつい研究や趣味で夜更かししてしまう自分の生活習慣を見直すことにしました。この本は自己啓発本ではありませんが、本当に自分自身へのコントロール/管理効果を高める良い本です。夜更かしがやめられない人、朝寝もやめられない人、だけどなんとか生活改善したい人、特に寝なくても元気そうな大学生の皆さんに(笑)、ぜひ、一読をお勧めします!