教授 千田 孝彦
混迷の時代だからこそ「生き方」を問い直す,のプロローグで始まる、稲盛和夫氏の「生き方」(サンマーク出版)は、誰もが、生きていく上で、考えたり、悩んだりすることに対して、人間として正しい生き方、あるべき姿とは何かを分かりやすく述べています。
この本には、共感することがたくさんあり、その中のひとつを紹介したいと思います。
″人生をよりよく生き、幸福という果実を得るには、どうすればよいのか。″ということについて、彼は、次のような方程式で表現しています。
人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力
つまり、人生や仕事の成果は、これら三つの要素の ″掛け算″によって得られるものであり、けっして、″足し算″ではないのです。
まず、能力とは、先天的に与えられる知能、運動神経、健康のこと。熱意とは、事をなそうとする情念や努力する心のことであり、これは自分の意志でコントロールできる後天的要素。そして、最初の「考え方」とは、心のあり方、生きる姿勢のことであり、三つの要素のなかでは最も大事なもので、この考え方次第で人生は決まってしまう。「プラス方向」の考え方が人生を大きく左右する。では、これは、どういう考え方なのでしょうか。知りたい人は、ぜひ、自分自身でこの本を読んで、確認してみてください。
これから進路希望を達成するために、今、大切なのは、大学での知識習得を通して、学生諸君一人一人がチャレンジ精神を養うことです。
つまり、自分の志望する進路対象が遠隔試験による選抜を要求しているのなら、理屈ぬきでやってやろうではないかという気概を強く持つこと。そして、そのために努力することを決して忘れずに日々実践して欲しい。何故ならば、この努力する喜びは、人間の様々な可能性を引き出してくれる原動力となるものだからです。
はっきりと将来への志望を持つことは確かに大切ですが、社会がそれを十分に受け入れてくれるとは限りません。また、自分の能力・個性がどのように養われていくか、志望も今後どう変わっていくか分りません。そのような中で、自分の可能性が本当にチャンスになるためには、大学でのすべての授業に言い訳することなくしっかり集中することが何よりも大切であります。そして、学生諸君は、進路実現に向けて最後まで諦めずに粘り強く努力をして欲しいと願っています。
このように、あることをするのには、①「努力してやる」、②「好きでやる」、③「楽しんでやる」の三段階があり、それぞれが大切ですが、「努力」なくして物事は成就しないものです。しかし、孔子の言葉に「楽しむに如かず」、つまり、「努力して勉強している者は、それが好きで勉強している者には敵わない。また好きでやっているものでも、楽しんでやっている者には敵わない」という言葉が示すように、それが楽しんでやることができるようになれば最高のことです。どんなことでも楽しんでやれるようになりたいものです。これを「悟りの境地」と言います。
本学の学生諸君に実践して欲しいことが二つあります。ひとつは「努力」であり、もうひとつは、「向上心」です。向上心とは現状に満足しないで、向上進歩しようとする心のことであり、人間は誰でも向上心というすばらしい宝を持っています。では、人間の「向上心」というガソリンに点火するのは、その人の熱意・執念・志が必要です。そして、熱意は、その人の信念、使命感、理想、希望、大志、思想、ビジョンといったものから生まれます。心のあり方が熱意の素になります。人間の心とは、誠に不思議なもので、目に見えない、手で触れない、頭の中にある心というものすべての原動力になっていると考えられます。
人生は限られていますが、生き方は無限です。
つまり、"It is not the length of life, but depth of life." ( by Samuel Ullman )
(人生とはその長さではなく、その深さが大切)
だからこそ、学生諸君には、誰でもが持っている「向上心」を大いに生かして、これからの人生を志高く切り開いていくことを期待します。
そして、東北・北海道唯一の総合的な体育大学で学んでいることを一人一人が自覚して、自信と誇りを持ち、本学の「体育スポーツ健康科学」という専攻領域において、学生諸君が日々成長できるように、これまでの教育経験を活かして、教員として手助けしていきたいと思います。