スポーツ情報マスメディア学科 助教 溝上 拓志
子どもの頃、友人たちと毎日のように対戦し遊んでいたサッカーゲームソフト「ウイニングイレブン(以下「ウイイレ」)」。身近な遊びだったウイイレは、今年開催された第18回アジア競技大会(ジャカルタ・パレンバン)のデモンストレーション競技として初採用された。私は、アジア最大のスポーツの祭典において日本代表選手がウイイレで金メダルを獲得したことを知り、何とも言えない不思議な気持ちになった。
コンピュータゲームとスポーツ。本書は、正反対であると言われてきたこの2つの文化に対して、デジタルテクノロジーの進展がもたらした変化やこれからの可能性を論じている。著者のアンディ・ミア(田総恵子
訳)は2008年に国際eスポーツ連盟(以下「IeSF」)が設立されたことについて、19世紀に起きた伝統的スポーツ体系化の動きに匹敵すると述べている。実際にIeSFは、2013年以降世界アンチ・ドーピング機構に参加し、その後スポーツアコードの暫定メンバーになっている。これらの動きからeスポーツは、今後スポーツ界だけではなく社会にとっても重要な位置付けになっていく可能性があると考えられる。
本書はeスポーツに限らず、「スポーツ×テクノロジー」についても文献や事例をふまえて幅広く取り上げられている。第2部以降では、トレーニング、パフォーマンス評価、バーチャルリアリティ、ソーシャルメディアとオリンピック等の変容についても描かれており、体育系大学の学生にもおすすめの1冊である。
来年には、茨城国体に合わせて全国都道府県対抗eスポーツ選手権が開催される。すでにウイイレの採用は決まっており、どのような盛り上がりをみせるか今から楽しみだ。