2015年4月17日金曜日

【TORCH Vol.068】 東日本大震災と刊行物

仙台大学学長 阿部 芳吉 

 2011年3月11日午後2時46分に大きな揺れと共に2万人以上(震災関連死を含む)の犠牲者を出した東日本大震災から丸4年が経過致しました。
 私は阪神淡路大震災から学んだことを胸に、全国の学生たちと手を携え、被災地に出掛け、主に子どもたちの学習支援を行って参りました。

 次に当時の刊行物を紹介します(宮教大復興支援センター長)

〇踏み出そう!子どもたちの笑顔のために
 「あすへ向けての軌跡」~震災から一年を経て~ 
 発行:平成24年3月31日 国立大学法人宮城教育大学教育復興支援センター
〇野鳥と自然と友だち わたしたちの中野小学校
 「東日本大震災と教育現場」
 編集:仙台市立中野小学校(校長 伊藤公一)
 発行:平成24年3月31日 国立大学法人宮城教育大学教育復興支援センター
〇東日本大震災「語り継ぐ鮮明な記録」七郷の美しい風景は私たちが取り戻す
 発行:平成24年3月31日 国立大学法人宮城教育大学教育復興支援センター
〇東日本大震災「震災から一年・・・未来へ」~榴岡小学校の記録~
 編集:仙台市立榴岡小学校(校長 久能和夫)
〇東日本大震災 「固い絆を永遠に」
 編集:仙台市立郡山中学校(校長三浦亮)
 発行:平成24年3月31日 国立大学法人宮城教育大学教育復興支援センター
〇東日本大震災「出島 学舎の軌跡」女川町立女川第四小・女川第二中の記録
 編集:+女川町立女川第四小学校・女川町立女川第二中学校
 発行:平成25年3月31日 国立大学法人宮城教育大学教育復興支援センター
 以上が、現場の校長先生やその教職員の方々と一緒の刊行物ですが、

この他に
〇「被災地の子どもと大学生」という学生ボランティア活動報告書2012も作成致しました。
また、
〇学校防災最前線
 編集:阪根健二 発行:2012年10月1日 ㈱教育開発研究所 
 「復興を支援する立場から見た今後の学校経営課題」(38頁~41頁)
〇震災からの教育復興 発行:2012年10月12日 監修:国立教育研究所
 「未来の災害を見据えた教育の連携と創発」(171頁~174頁)
に私の考えを述べさせて頂いております。
これらの資料について興味をお持ちの方はどうぞお声掛けください。
 ところで国の集中復興期間(2011~2015年度)が終了します。2016年度からの復興事業
について、国は自治体負担を求める方針で示唆していると伺っています。
 地域の復興には、住居はもちろんですが図書館や体育館等の公共施設の立て直しも、必須
欠くべからざるものです。生涯消えることのない心の傷を背負った方々などに、国の方も継
続して温かい支援の手を差しのべてくれることを切に願っています。

2015年4月2日木曜日

【TORCH Vol.067】 「アメリカ・メディア・ウォーズ」 ジャーナリズムの現在地 大治朋子 講談社現代新書(2013)

山 内  亨

 新聞を読まない大学生の急増に驚いたのが10数年前。学生のメディア離れはスマートフォンの普及で更にその数と勢いを増し、最近ではテレビを見なくても生活には困らないという声を聴くほどに進行している。
この問題は、学生が「新聞を読まない」「テレビを見ない」と言う「メディア離れ」の現象が指摘されるだけでは不十分で、政治、経済・社会状況に目を向けず、身の回りの感覚世界に安住する「社会離れ」の恐ろしさが指摘されなくてはならない。
国の未来や自分の将来を左右するニュースだけでなく、生活に関わるニュースにすら 関心を寄せない学生の姿が見える。「世の中の出来事はネットで見ているよ」との声も返ってくる。しかし重要な事象を現場で取材したメディア(記者)の一次情報に求めず、ネットに転載されるメディアの情報の一部や、情報を見たフォロアーの書き込み情報で十分とする考えが心配だ。悩ましい事態は日本だけの事では無いようだ。

 大治朋子著『アメリカ・メディア・ウォーズ』ジャーナリズムの現在地(講談社現代新書)はアメリカの新聞メディアの状況を詳しく伝え、日本の近未来を心配する。
アメリカと日本では、新聞の売り方、広告比率など読者の手元に渡るまでのメディアの構造に違いはある。しかしWebをはじめメディアを巡る技術進歩が既存メディアに大きな影響と変化を与えていることは、日米に共通する。
氏の著書から見えるものは「ニュースを伝えるのは誰か」を問いつつ、ネット時代の新聞生き残りをかけるアメリカでの厳しい戦いである。

 ニュースの簡便な閲覧や検索、情報を共有できるWebサイトの進化で、大学生の「新聞離れ」メディア離れは一段と加速するであろう。変化する時代の事象を正確で信頼できる情報としてフィールドの中からすくい取り、いかに知らせるかはジャーナリストの役割である。だが本物のジャーナリストを育てるには時間と経験、費用もかかる。
ジャーナリストを育てる環境も、新聞社の縮小や経営難で変化することが考えられる。
社会状況を知らせ、時に警鐘も含めて伝えるジャーナリストは新聞社やマスメディアの縮小とともに衰退してしまうのか・・・。そのことに気付いた時はすでに手遅れかもしれない。そしてそれは日本の近未来かもしれない。
この書はジャーナリズムの現在地を知り、メディアの置かれた状況を知る手掛かりとなる一冊である。