准教授 南條 正人
この漫画の主人公は、福祉事務所の現業員(ケースワーカー : 社会福祉主事)で、生活保護に係る業務に携わり奮闘するストーリーです。ちなみに、この現業員とは、何かしらの理由によって生活が困窮している状態にある者等と面接をし、その者の預金等の資産や環境状況等を調査したうえで、保護の必要の有無やその扶助の種類を判断することとなっています。さらには、現に生活保護を受給している者の自宅を定期的に訪問し、生活指導も行うことになっていますが、この漫画では、これらの現業員の業務内容がリアルに描かれています。
この漫画を通して、私は自身の社会福祉士を取得するために行った社会福祉援助技術現場実習を思い出します。学生時代、福祉事務所で実習を実施させていただき、実際に生活保護を受給している方のご自宅を訪問するという貴重な体験をさせていただきました。ひとり親世帯、外国出身のご夫婦世帯など、各世帯によってニーズも異なり、生活保護は画一的に行うものではないということを学びました。この漫画からも私が体験したことのようなこととともに、生活保護の実態や生活保護法の目的、原理原則についても触れられており、社会福祉士の指定科目である「低所得者に対する支援と生活保護制度」の学びにもつながる内容です。
以下は、この漫画である柏木ハルコ 著「健康で文化的な最低限度の生活(1)」の引用です。
「もちろん生活保護の金を酒やパチンコに使うこと自体は違法ではありません。」
私は上記の内容を「ソーシャルワーク演習」の授業で取り上げています。生活保護費は税金から賄われており、そのお金をお酒やパチンコに使用することに対して、学生ひとり一人がどのように考えるか、グループディスカッションを行い、最終的には生活保護法の目的や社会福祉士の倫理綱領にふれるという演習授業を展開します。
最後に、自分自身が体験したことがなくても、漫画の世界を通してその実態をリアルに知ることができると思います。多くの学生たちに、このように考えさせられる漫画を手にとり、福祉を身近に感じてもらいたいと考えています。